こんな時ってある。
ちょっとした拍子に手に大切に抱えていたボールを落としてしまい、ボールは坂道を転がって行き止まりそうにない。走って追えば、砂利道で転んでしまい膝を擦りむき血がにじみ出す。履いていたお気に入りのジーンズは穴が開いてしまう。手のひらは擦り傷でヒリヒリ。そして何よりもボールは見当たらない。喪失感、虚脱感。
大きく膨らんでいた風船が急に萎んでしまったかのよう。
上っていた梯子を突然外されてしまったかのよう。
散歩をしても何も目に入らない。歩き続けても、いつものように頭の中で物事がストン、ストンと整理されない。
何を食べても、何を飲んでも感動しない。
心ここにあらず。
そんな時は、手当たり次第に本を読むか、音楽を聴くか、映画を観るに限る。
流れに抗わずに、流れに身を任せる。我武者羅に現状打破を狙っても、波にのまれてしまう。
そのうちに、ふと悟る。
どんなに頑張ったって、自分は自分でしかない。静寂の中で自分の立ち位置が見えてくる。
一足早く訪れた初夏の様な陽気で、濃厚な紫色の花房が馥郁たる香りを撒き散らしている。
気が付くと、見失ったと思ったボールを取り戻している。ボールをリラの香りの中で高く空に放る。
パシンッ。
真っ青な空に弧を描いて戻ってきたボールを両腕で受け止める。
笑顔が戻る。
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