マドレーヌの香りで幼い頃の記憶が突然呼び覚まされるプルーストの小説。
そんな高尚なイメージとは裏腹に、近所のスーパーではマドレーヌ20個入り特売大パックが売られている。
パリ郊外の学生寮で寝泊まりしていた頃。人気のないキャンパスに、ぽつりとあった旧式型の自動販売機。そこの定番の一つが二個入りのマドレーヌ。朝から学生達とおしゃべりをする気力もなく、かと言って一人でぽつねんと食べることもできずにいた日など、空腹を満たすために自販機のお世話になったもの。
だからマドレーヌに対する思いは、魅力にあふれたものでは決してない。所謂プルースト現象か。
これまで沢山の洋菓子、和菓子に挑戦してきたが、今まで一度も作ったことがなかった。心の奥底から突き上げるような欲求を感じてこなかったのである。
ところが、先日全く違った場所で、全く違ったバックグラウンドの二人によるマドレーヌのレシピとそれを作るまでのストーリーを読むに至り、人生で大切な何かを見落としているのでは、という気に突如なってしまう。
そうなると、何かに取り憑かれたかのように、あらゆるレシピを集め、読み比べをし、幾つか書き上げ頭の中でシュミレーションをし始める。材料を揃え、キッチンで卵を割るまでに、そう時間はかからなかった。
今回大いに参考にしたレシピは全卵を使うもの。湯煎しながらもったりと作る。レモンの皮を入れて風味をつけるが、ここで欲張り心が出てしまい、お抹茶を入れて緑の鮮やかさを演出しようと試みる。マドレーヌの型が近所のスーパーには置いてなかったので、カップケーキの型を使うことにする。予想以上に生地が重たく、四苦八苦。
ふっくらと上品に仕上がったようだが、やはりカップ型ではマドレーヌではない。
ここは型から入るフランス式に倣わねば。週末にマドレーヌ型を仕入れよう。
マドレーヌの香りを追う旅は、未だ始まったばかり。
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