寒さもひときわ厳しくなって、母が日本から送ってくれた貴重な黄色いダイヤを使って、味噌造りに挑戦する時期がいよいよ訪れたと思われた。もう何度か味噌造りを楽しんでいるという友人と、一時帰国をした際に乾燥麹を日本から運んでくれた友人に声を掛け、一緒におしゃべりも楽しみながら、愛情込めて大豆と麹を捏ねて味噌造りをしようじゃないかとなった。
幼い頃のおぼろげな思い出となるが、掘っ冠りをし割烹着を着た近所のおばさんたちが大勢で、大きな鍋で大豆を煮て、にぎやかに味噌を作っていたように思う。梅干し作りも、同じように大勢集まって、にぎやかにおしゃべりを楽しみながら、紫蘇と塩で手を真っ赤にして、干した梅を漬けていたように覚えている。
恐らく幼稚園生の頃で、手伝いもせずに、ぼんやりと眺めていただけなのだと思う。それなのに、その思い出は強烈で、味噌の香りや紫蘇の香りを伴って、時々幼い頃の自分の姿さえも見いだせる映像が何かの拍子にふと頭の中を流れることがある。
あの頃の量とは比較にもならない、わずかな量とはなるが、とりあえず完成した味噌の量が2キロもあれば十分ではないか、それを皆で分けて保管し、熟成させて楽しもう、そんな風に思えた。この2キロ、というのは、適当に出した数字ではない。
友人に持ってきてもらう麹の量は600グラムがマックスと思われた。我が身を振り返っても、どうしても日本からの帰りのスーツケースは食べ物や書籍でぱんぱんになってしまう。知り合いに頼まれた物を入れる余裕など、普通はないと言ってよく、ずうずうしいお願いと知りながら、そして、断られても仕方あるまいとの思いで、お願いしたものだった。
ありがたいことに、友人は600グラムならと引き受けてくれ、日本のご実家に届けた乾燥麹を持ってきてくれた。従い、全てのベースは乾燥麹の量600グラムであった。
乾燥麹を購入した会社のサイトには、味噌造りの動画が掲載されており、そこに材料の比率など好みの味に合わせて詳細に説明されていたので、それを参考に、乾燥麹が600グラムあれば、味噌は2キロ出来ると導き出され、2キロなら十分はないか、いやむしろ、キロこそが初めて挑戦するにあたり最高の量のように思えてしまったのだから、おかしなものである。
こうして、以下の材料と量が決まった。
有機玄米の乾燥麹 600グラム
国産有機大豆 433グラム
ブルターニュ地方のゲランドの塩 250グラム
以下、作る手順を次回に役立つように、反省点も含め詳細に箇条書きをする。
・前日に大豆は良く洗い、3倍以上のたっぷりの水に浸しておく(最低18時間)
・豆が完全に水を吸収していることを確認する
・圧力なべを高圧にセットし、沸騰してから40分弱火で煮る
・手で潰して芯がないことが肝心、だが、今回はやや煮過ぎたか
・ひょっとしたら30分で十分だったか、或いは中圧で40分か
・大豆を煮ている間に、麹と塩をまんべんなく混ぜておく
・60℃程度に豆の温度が下がった頃合いで、豆を潰す
・十分潰れたところに、予め混ぜておいた麹と塩を様子を見ながら混ぜていき、全部まんべんなく混ぜ合わせる
・十分に大豆、麹、塩が混ざるように愛情込めて捏ね、必要あればとっておいた大豆を煮た水を適宜入れながら、耳たぶの柔らかさになるようにする
・乾燥麹を使っているので、入れる水の量は多めとなるか
・十分捏ねたところで、空気を入れないように団子を作る
・煮沸消毒・アルコール消毒をしておいた瓶・壺・容器に団子を潰しながら(空気を入れないように)ぎっちりと詰め込む
・ラップや和紙をし、空気に触れないようにして、重しを載せて完了
大豆と麹、そして塩を混ぜている時のふくよかな香りといったら、最高。これで夏ぐらいまでは、じっくりく熟成するのを待つのだけれど、春先にちょっと様子を見てみるかしらね、と友人たちと笑い合う。
お味噌さん、お味噌さん。美味しくなあれ、美味しくなあれ!
おまじないをして、風呂敷を巻いたお味噌の瓶を、地下の冷暗所の棚に恭しく載せる。
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