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2023年9月21日木曜日

思わぬ差し入れ

 





トンカとの散歩から帰ってくると、玄関脇に小さな包みがちょこんと置いてあった。おおっつ!近所に住む苔庵のマスターからの差し入れに違いない。散歩の途中に、別件でメッセージのやり取りをしていて、彼女が苺大福を上手に作れたことを知っていた。しかし、差し入れしてくれるなんて、感謝、感激、雨、霰。


果たして、真っ白で気品のある大福様がお出ましに。やわらかな甘い香りがふっと漂う。お皿に載せて、恭しく改めてご挨拶。かすかにピンク色が見えるところが、奥ゆかしくも艶やか。





さっとナイフをあてると、ぱっとルビー色の香気がたった。


うーん。ルビーというよりは、もうちょっと柔らかで、甘そうなイメージを彷彿とさせるものを考えないと、しっくりとこないか。


望月や ゆるりと割れば 初苺


望月や むっちり肌の 初苺


望月や みどりごの肌 初苺


大福は期待を裏切らないもちもちさ、白餡は甘すぎず、苺の甘さを優しく引き立ててくれている。感動の一品。マスターありがとう。



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2023年7月23日日曜日

涼風会席






トンカをこよなく愛してくれる犬の師匠である友人が、スライサーを安く手に入れたので、お試しということで豚肉の薄切りを差し入れしてくれたことがあった。丁度息子バッタが帰って来ていた週末だったので、早速生姜焼きにして有難くいただいた。


フランスでは薄切り肉は簡単には手に入らないので、我が家でしゃぶしゃぶやすき焼きをしたことはなかったが、これは楽しめるのではないかしら、と友人を誘ってみたところ大いに乗り気になってくれた。そこで、共通の友人でもある、ご近所のマスターを誘って、3人で鍋を囲むことになった。


しゃぶしゃぶ鍋などないが、フォンデュ鍋ならあると思っていたが、さすがご近所のマスター、土鍋もコンロもあるので持参してくれるというではないか。一気に盛り上がったものの、この暑さ。鍋で暑気払いとも言えなくはないが、今回は冷しゃぶとして、寒くなった秋にも、改めてしゃぶしゃぶ鍋にしようかと提案してみる。


ところが。友人二人とも、材料さえ揃えば他にすることがない鍋の魅力断ち難し、とのこと。しかも、唐辛子たっぷりのキムチ鍋にしよう、などと恐ろしいことを言い出す始末。よっしゃ。しゃぶしゃぶ決行で結構。


果たして、ご近所のマスターが土鍋とコンロ担当、犬の師匠が食材担当、不肖私めが鍋のスープ担当となった。豆乳鍋にしようと、色々と楽しく検索。最終的には胡麻豆乳鍋とし、唐辛子ペーストを薬味にして、辛味が好きな友人たちのリクエストに応えることにした。


【胡麻豆乳鍋の出汁作り】

たっぷりの水に昆布を一晩漬けておき、うまみを引き出す。せっかくなので、ゆっくりと煮て、沸騰寸前で昆布を取り出しておく。

・摺り胡麻 大匙4(今回は我が家にあった黒胡麻使用)

・練り胡麻 大匙1

・キビ砂糖 大匙3

・自家製味噌 大匙1.5

・塩 小匙1


以上を練り合わせ、昆布出汁に溶かし込む。溶け込んだことろで、昆布出汁の半分の量の豆乳、醤油(大匙3)、胡麻油(大匙1)を入れる。これで1.2リットル程度の出汁が完成。薬味として、マグレブのアリサ(唐辛子、ニンニクのペースト)を準備。


この日、犬の師匠が持ってきてくれた食材

・薄切り豚ロース(美しいピンク色)

・白菜、青梗菜、韮、エリンギ、エノキ、豆腐、葛切り、〆のお饂飩


土鍋がぐつぐつと頼もしい音を立て始めると、胡麻の香りが立ちあがり、アリサの刺激的な香りも手伝って、皆の顔は興奮に輝き出した。待ちきれずにピンク色の薄いお肉をしゃぶしゃぶっとし、口に入れてみると、暑さもふっとぶ程に美味。その後、三人ともおしゃべりに夢中になりつつも、箸を休めることなく、大騒ぎで大いに楽しんだことは言うまでもない。しかも口々にお腹がいっぱいと言いながらも、〆のお饂飩はちゃんとお腹に収まってしまった。


途中で、前回好評だった氷皿にて、今回はきゅうりの桂剥きで梅酢玉ねぎとサーモンを巻いた箸休めを提供。デザートには、粒餡で作った水ようかんを用意していたので、皆で勢いで食べてしまったが、恐らく水菓子あたりが良かったのでは。庭の枇杷があれば最高だったけれど。


こうして、名称は涼風会席なれど、実際は熱々の鍋料理。それでも、真夏の夜の夢ならぬ、真夏の夜の宴。最高!また是非、皆で集まろうと笑顔で日付が変わる頃に解散。暑くても、皆で囲む鍋、おすすめです。



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2023年4月2日日曜日

花より団子のお花見会

 




いつもなら大地ではクロッカス、水仙、ヒアシンス、チューリップの順で咲き始め、次第に連翹が黄金に輝き出すと、樹木の花芽がぷっくらとし出して、さくらんぼ、ミラベル、クエッチがそれぞれに純白の花を咲かせるのだが、ここにきて駆け足で暖かくなったものだから、一斉にすべてが咲き誇っている。


花が散ってしまう前にと、慌ててトンカの友人師匠と連絡し合い、我が家の庭でお花見をすることにした。あいにく我が家はトンカと私だけだったが、彼女の家族は大型プードルとスピッツを飼っていて、バッタ達よりは二、三年年下のお子さん二人がいる。皆さんお揃いでどうぞと誘ったのだが、当日旦那さんは出張で不在、そして恐らく子供達は遠慮すると思うわ、とのことだった。


天気予報はやっぱり当てにならず、良い日を選んだはずなのに当日は肌寒く、とてもではないが外でピクニックをするのは厳しい天候となってしまった。それでも、お花見決行で結構よね、と確認し合った。せっかくだけど、家の中で食べましょうよ、と。食事会は人数が大勢いた方が楽しいと相場が決まっている。ご近所の散歩仲間に声を掛け、彼女がデザートを作って持ってきてくれることになっていた。


「本当に皆でお邪魔していいのかしら。」


友人師匠からそんなメッセージが届いた。勿論よ、嬉しいわ!と返事をしながら、「皆」とは、子供たちのことなのか、犬君たちのことなのか、と疑問に思った。が、その時はその時。茶巾寿司を作ろうと準備をしていたし、海老の殻でとった出汁はたっぷり出来ていたし、子供達が来てくれればトンカも大喜びする。


果たして。トンカが興奮し出したので玄関に出てみると、おお、大型プードル君、ちびっこスピッツ君を引き連れ、お子さんたちも一緒に、友人一家がお揃いでやって来てくれた。「息子の友達も呼んじゃったのよ。いいよね。」というので、最初は犬君の友達かと勘違いをしてしまったが、高校生の友達のことであった。大笑い。勿論よ!




トンカは訓練をした甲斐なく、興奮して飛び回って皆に挨拶をしている。犬君たちは外で遊んでもらった方が落ち着くかもしれない、となったが、せっかくなのでと皆で外でさくらんぼの花を愛でることにした。ひとしきり遊びまわったり、おしゃべりをして、お腹もすいてきたし、と家に戻り、スープを温め直していると「あら!トンカが!」と、友人のお嬢さんが素っ頓狂な声を上げる。何事かとサロンに行けば、なんと、一つだけ格好が悪くできてしまった茶巾寿司をお皿に分けて置いておいたところ、それをぺろりと食べてしまった後だった。


皆大笑いをしているが、ちょっと、ちょっと、トン助よ。それはないでしょう。でもさあ、ねえ。美味しかった?寿司飯には、椎茸、人参、さやいんげん、海老が入っていたが、卵焼きはもちろんのこと、お米一粒も残さずに、食べてしまったのだから、美味しかったのだろう。もうちょっと味わって欲しかったけど、いや、そこじゃないよね。いやはや。


友人はお稲荷さん、細巻き、唐揚げをたくさん作って、お重に入れて持ってきてくれた。ジューシーなお稲荷さんは大好物。嗚呼、なんて幸せなのだろう。そして圧巻は散歩の友人のデザート。日本産のサツマイモをマルシェで見つけたとかで、サツマイモのシフォンケーキを焼いてきてくれたのだが、これが得も言われぬ美味しさ。まろやかで、軽くて、優しい味わいで、一口ごとに唸ってしまった。もう一つは、苺大福。可愛らしい赤い苺がまっしろな大福からのぞいていて、見て楽しみ、味わって楽しむ、素晴らしい出来。


花より団子とはよく言ったもので、おしゃべりと美味しいお食事に夢中になり、あっという間の楽しいひと時に。どうもありがとう!今度はもうちょっと太陽が出ていて、暖かい時に外でにぎやかにやろうね。


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2023年3月24日金曜日

持つべきものは友





 


急に悪寒が走り、頭が爆発するかの如く痛くなり、もう座っているのさえしんどくなってしまったのが四日前。丁度ランチ前だったので同僚たちにはランチに行ってもらい、一人静まったオフィスで、ヴィヴァルディのデュオのヴァイオリン協奏曲を流しながら、デスクの前に突っ伏して迷走ならぬ瞑想をした。


そのお陰か、午後は何とか持ちこたえることができ、定時に帰宅。今か今かと待っていたトンカに、今日の散歩は中止とは流石に言えず、リードをつけたままで近間で短時間だけ行くことにした。


それがそうはならないというのが現実。短時間コースにはそれなりの罠があり、道路に出てしまうトンカの後を追ったり、くねくねの小径ではトンカのペースについていけず、時々姿を見失いそうになり、慌てて呼び戻したりと四苦八苦。


翌日は近所の友人宅で前回のアトリエ仲間とのお茶会が予定されていたが、流石に今回の参加は無理だろうと、やむを得ず欠席する旨連絡を入れた。


翌日も頭痛は収まらないがテレワークの日でもあり、どうしても終えてしまいたい案件を抱えていたので何とか仕事をし、夕方にはトンカに促され、散歩に森に出た。丁度トンカの友達のルイに会ったので、トンカは歓喜してルイと駆けっこをし、トンカにとって最高の散歩となった。


いつもよりも長めの散歩とはなったが、気持ちは爽快で、気分転換にもなり、これで頭痛さえ消えてくれればと願わずにはいられなかった。家に帰って携帯見ると、お茶会をしている近所の友人から電話が入っていたことに気が付いた。どうしたものかと思っていると、トンカが元気よく玄関の方に走っていく。


門のところでは友人達二人が、なんとお見舞いセットを持ってきてくれていた。色合いも綺麗にしっとりと焼き上げられたチーズケーキ、風邪には一番との手作り生生姜シロップ、皆で研究し合い最高の出来になったというまあるい大福、友人の一人の手作りの白味噌!ああ、なんて、なんて心優しい友人達よ!その気持ちだけで、もう半ば元気になってしまう。


トンカの散歩も友達のルイに助けられたように、私も友達に大いに助けられている。持つべきものは友。本当にありがとう!



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2023年3月22日水曜日

基本に忠実であれ

 





会社の同僚の誕生日ということで、栗好きの彼女のためにと、私の大好きなマロンケーキをカップケーキ風に仕立てて焼き上げ、そこにミロワールを施しお洒落に艶を出して演出しようと思った。


ところが、当たり前のことだがカップケーキサイズにすることで、中身のしっとり感よりも周囲のぱさぱさ感が際立ってしまった。さらに、ミロワールを美しく仕上げるには温度が重要で、一度焼き上がったケーキを冷凍しておく必要があったと気が付いた時には後の祭り。なんだかチョコのお化けのような塊が出来上がってしまった。


翌日持っていくようにとケースに入れて、それごと冷蔵庫に保存していたが、当日、もう一度出来栄えを見て、持っていくことを断念した。違う。ミロワールのお洒落さが十分に発揮出来ていない。


そこで、今度は以前作ったチョコレートムースに、さすがに同じではつまらないので、ホワイトチョコレートで作るムースの二層立てにして、そこにミロワール施してみようと思い至った。125mlサイズのヨーグルトカップを準備して、先ずはホワイトチョコレートムースを作って入れ、その後でチョコレートムースを入れた。


ただ、ホワイトチョコレートのムースが、どうも想像していたものと違う気がした。ゼラチンを使うことに、違和感を覚えた。というのも、チョコレートムースの方にはゼラチンを使わないからで、これでは口当たりが全く違ってしまう。


しかし、そう気が付いた時には後の祭り。出来上がったものを味見してみると、それぞれに美味しいのだが、一緒に味わうと、全く合わない。チョコレートムースのレシピは、ダークチョコとミルクチョコで二層作るものであったし、ホワイトチョコレートのムースのレシピは、キャラメル味との二層で作るものだった。


プロはちゃんと味や食感を考えてレシピを作り上げている。だから、最初から応用編を勝手に手掛けてしまっては、失敗するのも当たり前のことだろう。


残念なことに、今回もチョコレートの塊の出来損ない君は、冷蔵庫に取り残されてしまうことになった。次回こそはレシピを忠実にたどることにはするが、暫くの間はもうお菓子作りはよいかな、と思っている。


かくして、同僚は今でも彼女の誕生日にお菓子を作って持っていこうとした私の気持ちを知る由もない。まあ、いずれ別の機会があるかな。


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2023年3月12日日曜日

妖怪小豆研ぎ再び降臨







最近、友人たちの間でちょっとした手作り餡ブームになっていて、粒餡を作りました、とか、今小豆を鍋に入れたところだけど、お砂糖はどんな割合で入れるのかしら、とか、写真入りメッセージが飛び交っている。お上品なこし餡より粒餡よ、という声があるかと思えば、サラダ用として販売している瓶入り煮豆をミキサーで練って、漉し餡を作る裏技を教えてくれる人もいる。


今回ちょっと驚いたこととして、こし餡を作る際に、仲間全員がミキサーを利用していること、水に晒す過程は省いていることだった。水に晒すと味が薄くなるとのことだったが、へえっと感心してしまった。今度味比べをしよう、と言ったら、すごく嫌がられてしまったので、本当のところは分からない。手間暇掛けずに、美味しい餡が出来るのであれば、それにこしたことはないではないか。


本格的和菓子は専門家に任せて、我が家ではちゃちゃちゃっと、なんちゃって和菓子を作って楽しむ、というのも一理あろう。一方で、本格的な和菓子を作ってみたいとの欲求を満たすことはできない。なんちゃって和菓子を作りたいのではなく、本格的な味を作りあげる過程を知り、その味にできるだけ近づきたい、と思うのだから仕方ない。


美味しい粒餡を作りたい、との思いがむくむくと湧いてきてしまった。丁度戸棚には小豆が袋の半分ぐらい残って眠っている。一袋500グラムだから、250グラム程度あるということか。


以前レシピを見比べて、これだ、と思った和菓子屋職人のレシピを改めてノートに書き写し、じっくりと読み直す。よし、これでいこう。


しゃき、しゃき、しゃき。小気味よい音がキッチンに響く。


小豆研ぎましょか、それとも、人取って食いましょか しゃき、しゃき、しゃき



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2023年1月18日水曜日

ビストロYuvuzela亭 新年会お品書き







最終的に、獅子舞を披露してくれる予定の友人が、獅子舞プレッシャーか当日体調崩し急遽欠席。人数の関係で声が掛けられていなかった友人に連絡すると、当日のお声掛けだったけれど、喜んで飛んできてくれた。従い、総勢10名。






本当にありがたいことに、皆、腕によりをかけての一品を持ってきてくれたので、豪華絢爛。すべての写真を撮らなかったことが残念ながら、以下お品書きをご紹介。


生麩田楽




がんもどき




手毬寿司




エリンギの柚子胡椒マリネ


お造り

    雲丹



    ヤリイカ(とろろ昆布〆)

    鯛(とろろ昆布〆、塩〆)





鮭の南蛮漬け

ペンネアラビアータ

ロールキャベツ






京風白味噌雑煮

大根浅漬け 柚子風味





花びら餅








餡子入りガレットデロワ





皆の秘蔵のシャンペン各種、白ワイン各種


あらためまして、皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします!




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2023年1月14日土曜日

ビストロYuvuzela亭での新年会

 





先日、料理好きの友人と出会った際に、彼女のお手製のガレットデロワを囲んで皆で茶話会をしましょうとなっていた。11月末のこと。その彼女から、皆さん既にガレットデロワを食べ飽きちゃった頃でしょうし、他の物でランチかお茶しましょうよ、とのメッセージが入った。喜んでお菓子は作るけど、企画は任せたいとのことだった。


「呼んでくれたら、すぐに行きます!」


その文字が脳内で炸裂し、バッタ達が誰も来ない週末がポップアウトし、新年会をしようとの思いに進化した。実施まで正味三日もない。さて、何人が集まれるだろうか。取り敢えず、思いつく仲間たちにメッセージを送る。


街でばったり会った友人の顔が思い浮かんだ。開口一番息子さんの進学について息せき切ったかのように話していたが、きっと思い悩んでいるのだろう。大勢で美味しいものを食べたら、ちょっとは気晴らしになるのではないかしら。


次には、このところすれ違いばかりで、なんだか避けているようで心苦しい思いをしていた友人の顔が浮かんだ。正直なところ、一対一で話をするには気が重い相手ではあったが、最後に偶然会った時の表情が、いつもの張り切った様子ではなかったので気にはしていた。そうだ、この機会に彼女も呼ぼう。


トンカに会いたいと言ってくれていた友人の顔も浮かんだ。カナダに行ったり、日本に行ったりと忙しくしている彼女だったが、恐らく丁度日本から帰って来ているだろう。常に何かしらスケジュールを入れている様子だが、せっかくなので声を掛けてみよう。


今の仕事を辞める決心がついたので、是非お仕事あればお声掛けください、と言っていた年若い友人の顔も浮かんだ。恐らく前の仕事で、日本人スタッフが必要な時に声を掛けていたのだろう。今は全く違う仕事をしているので、そんな機会はなさそうだと思っていたが、友人達を紹介することは出来るだろう。


6人集まれば御の字。余りのショートノーティスなので、4人でも楽しくやれそう。そんな風に思っていたのだが、あれよあれよと皆快諾してくれて、スキーに行く友人と別件が既に入っている友人以外は皆来てくれることになった。


バッタ達の学校関係の友人が6名、大学の同窓会の友人が1名、前の職場関連で知り合った友人が1名、それにフランスに足を踏み入れた時からの恩人でもあり、大切な友人が加わり、私を入れて総勢10名の新年会となる運びに。


学校関係の友人とはいえ、お互いに知らない場合もあるし、この際、皆の自己紹介も兼ねて全員にメールを送った。


昨日思い立っての新年会のお誘いに即ご快諾くださり、ありがとうございます💖


急ぎのメッセージでしたので、改めて詳細下記の通りご連絡します。ご確認下さいませ。


日時: 〇月〇日(〇曜) 20時スタート

場所: ビストロYuvuzela亭


イチオシの逸品、皆と感動を共有したいと願う一品をお持ちいただけましたら幸いです。勿論ボトルでもOK。果物も嬉しいです。二品、三品でも、勿論大歓迎( ´艸`)。私は当日の魚の入り具合で決めますが、一応お刺身を予定しています。


以下、集う予定メンバーを紹介します。


と、書いているうちにも、数名の方から嬉しい参加の連絡を受け、総勢11名となりそうです。ギリギリだったので、都合のつかない方もいるだろうと、キャパ以上の方に声を掛けた結果でやんす。賑やかな方が楽しいよねってことで、手狭となりますこと、目をつぶってくださいませ。立席パーティーとするか、トンカとの相席ありとするか、押しくらまんじゅうとするか検討中です。お楽しみに。


  • 人生観が変わる程の珈琲を淹れるバリスタ。プロのこだわり精神で手掛けた各種料理は驚異的で人々に感動をもたらすことで定評。
  • 今回の新年会の陰の発起人(言い出しっぺ)。彼女の作る手の込んだ洋菓子、和菓子に恋に落ちた人は数知れず。洋裁、和裁もお茶の子さいさい。
  • 人生のパートナーとの出会いはパリのメトロでの演奏という超ロマンチックなエピソードを持つ、向日葵のように朗らかなミュージシャン。
  • 一歩下がってさりげなく人を立てる細やかな心遣いと秘めたる情熱が燃える瞳を持ち、狙いを定めたらスッポンの如く諦めない清純派熱血漢。
  • メドックマラソンという、ワインを楽しみつつフルマラソン完走を成し遂げた強靭な精神と体躯の持ち主。茶目っ気たっぷりの自然をこよなく愛する知性派アイドル。
  • 蘊蓄を語らせたら右に出る者はいない、知識と経験豊富な才媛。彼と一緒に食べたオレンジの種を蒔いて、今でも大切に育てているロマンチストの一面も。
  • フランスの合理性と日本の奥ゆかしさをバランス良く併せ持つ。高級食材もてらいなく使いこなし、軽妙洒脱なトークはどの年齢層にも大人気。書道の大家。
  • 遠目からも性別、年齢、血統を推し測れ、一度覚えた名前は忘れない恐るべし特技を持つが、発揮するのは犬限定。犬達から熱い視線を常に浴びている森のドン。
  • 会うたびに若返り、近所のコーラスクラブで美声を発し、見事な飲みっぷりで人生を謳歌する傍ら、日本産業振興のためEU界を暗躍するロビイスト兼陰のフィクサー。

あれれ。やばいわ。11名だと思っていたのに、何故か10名しか思い浮かばない。でも、遅くならないうちに、取り敢えずこれにて送ります。


さあ、10名分の椅子とテーブルをどうするか。


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2022年12月19日月曜日

初めての味噌造り

 





寒さもひときわ厳しくなって、母が日本から送ってくれた貴重な黄色いダイヤを使って、味噌造りに挑戦する時期がいよいよ訪れたと思われた。もう何度か味噌造りを楽しんでいるという友人と、一時帰国をした際に乾燥麹を日本から運んでくれた友人に声を掛け、一緒におしゃべりも楽しみながら、愛情込めて大豆と麹を捏ねて味噌造りをしようじゃないかとなった。


幼い頃のおぼろげな思い出となるが、掘っ冠りをし割烹着を着た近所のおばさんたちが大勢で、大きな鍋で大豆を煮て、にぎやかに味噌を作っていたように思う。梅干し作りも、同じように大勢集まって、にぎやかにおしゃべりを楽しみながら、紫蘇と塩で手を真っ赤にして、干した梅を漬けていたように覚えている。


恐らく幼稚園生の頃で、手伝いもせずに、ぼんやりと眺めていただけなのだと思う。それなのに、その思い出は強烈で、味噌の香りや紫蘇の香りを伴って、時々幼い頃の自分の姿さえも見いだせる映像が何かの拍子にふと頭の中を流れることがある。


あの頃の量とは比較にもならない、わずかな量とはなるが、とりあえず完成した味噌の量が2キロもあれば十分ではないか、それを皆で分けて保管し、熟成させて楽しもう、そんな風に思えた。この2キロ、というのは、適当に出した数字ではない。


友人に持ってきてもらう麹の量は600グラムがマックスと思われた。我が身を振り返っても、どうしても日本からの帰りのスーツケースは食べ物や書籍でぱんぱんになってしまう。知り合いに頼まれた物を入れる余裕など、普通はないと言ってよく、ずうずうしいお願いと知りながら、そして、断られても仕方あるまいとの思いで、お願いしたものだった。


ありがたいことに、友人は600グラムならと引き受けてくれ、日本のご実家に届けた乾燥麹を持ってきてくれた。従い、全てのベースは乾燥麹の量600グラムであった。


乾燥麹を購入した会社のサイトには、味噌造りの動画が掲載されており、そこに材料の比率など好みの味に合わせて詳細に説明されていたので、それを参考に、乾燥麹が600グラムあれば、味噌は2キロ出来ると導き出され、2キロなら十分はないか、いやむしろ、キロこそが初めて挑戦するにあたり最高の量のように思えてしまったのだから、おかしなものである。


こうして、以下の材料と量が決まった。

有機玄米の乾燥麹 600グラム

国産有機大豆 433グラム

ブルターニュ地方のゲランドの塩 250グラム





以下、作る手順を次回に役立つように、反省点も含め詳細に箇条書きをする。

・前日に大豆は良く洗い、3倍以上のたっぷりの水に浸しておく(最低18時間)
・豆が完全に水を吸収していることを確認する
・圧力なべを高圧にセットし、沸騰してから40分弱火で煮る
・手で潰して芯がないことが肝心、だが、今回はやや煮過ぎたか
・ひょっとしたら30分で十分だったか、或いは中圧で40分か
・大豆を煮ている間に、麹と塩をまんべんなく混ぜておく
・60℃程度に豆の温度が下がった頃合いで、豆を潰す
・十分潰れたところに、予め混ぜておいた麹と塩を様子を見ながら混ぜていき、全部まんべんなく混ぜ合わせる
・十分に大豆、麹、塩が混ざるように愛情込めて捏ね、必要あればとっておいた大豆を煮た水を適宜入れながら、耳たぶの柔らかさになるようにする
・乾燥麹を使っているので、入れる水の量は多めとなるか
・十分捏ねたところで、空気を入れないように団子を作る
・煮沸消毒・アルコール消毒をしておいた瓶・壺・容器に団子を潰しながら(空気を入れないように)ぎっちりと詰め込む
・ラップや和紙をし、空気に触れないようにして、重しを載せて完了






大豆と麹、そして塩を混ぜている時のふくよかな香りといったら、最高。これで夏ぐらいまでは、じっくりく熟成するのを待つのだけれど、春先にちょっと様子を見てみるかしらね、と友人たちと笑い合う。


お味噌さん、お味噌さん。美味しくなあれ、美味しくなあれ!



おまじないをして、風呂敷を巻いたお味噌の瓶を、地下の冷暗所の棚に恭しく載せる。



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2022年12月16日金曜日

A ce soir !

 





夕方、仕事の合間に携帯を何の気なしに覗いたところ、メールが届いていた。題名も「A ce soir !」。「では今夜ね」といったところか。


差出人は昔の同僚、イタリア人のリリー。彼女のパリのアパートで夕食会に誘われていたが、日程は翌日の夜の筈だった。ちょっ、ちょっと、待ってよ。ちらし寿司を作って持っていく予定にしており、仕事が終わってから海老、イクラ、卵などの材料を買い出しに行き、干し椎茸、人参、隠元などは、下ごしらえをしておこうと思っていた。


メールの本文を慌てて読むと、「今夜は皆に会うのがとても楽しみよ!○○(←私が」美味しい日本料理を一品持ってきてくれることになっているので、私は軽くパスタでも作る予定にしています。誰か、チーズ、デザートを持ってきてくれると嬉しいわ。19時半からお待ちしていますね。では、 « à ce soir ! » 」


ええっ!と思っているうちに、アイルランド人のカレンが「今夜はお誘いありがとう。デザートを担当するわ。」と反応、するとフランス人のドミニクが「チーズは任せて。」、ベロニクがアペリティフ、つまみを持ってくるという。


ちょっと、ちょっと!


慌ててリリーからの最初の招待メールを見ると、なんと私が勝手に一日ずらして認識していたことが判明する。トンカの夕方の散歩をカットすれば、ちらし寿司を作れないことはないが、海老なしとなろうか。ただ、夜家を空けるにあたり、トンカを事前に散歩させないなどということは出来ない相談だった。


なんてこった。慌ててリリーに電話をし、日にちを勘違いしていたことを告げると、大笑いされ、手ぶらで全然問題ないけれど、絶対来てね、と念を押されてしまった。


さてさて、どうしたものか。行かない、という選択肢はないことは確か。慌ててPouilly Fuméのボトルを一本冷蔵庫に突っ込み、先日買っておいたドイツのケーキ、シュトーレンの箱をプレゼント用に包装紙に包んだ。


早めに仕事を終え、トンカを散歩に連れ出し、急いで着替えて凍てついた車に乗り込んだ。年末のパリの夕方はプレゼントを買う人々でにぎわっていて、交通渋滞を覚悟せねばならなかった。それでも、恐らく日付が変わる時間帯に帰ることになるだろうから、電車よりも車の方が確かな交通手段だった。


遠くにエッフェル塔からの光が見え始めてくると、なんだか気持ちが高揚し始めた。夜のパリを運転するのは、久しぶりであることに気が付き、昔の同僚たちに会うことを意外にも結構楽しみにしている自分に笑みがもれた。


ちらし寿司を持ってこれなかったことは残念だけど、それは次回に、ということで。リリーのアパートの呼び鈴を鳴らし、5階まで階段をスキップしながら駆け上った。



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2022年10月29日土曜日

錦秋の晩餐会

 




深まる秋の晩、気の置けない友人達と集う。


気軽に、ゆるりと、楽しい時間が過ごせたらいいよね、と声を掛け、ちらし寿司を作っておくので、皆で楽しみたい料理や飲み物を持ってきてね、と伝えていた。


そうしたら、どうだろう。正に錦秋の晩餐会にふさわしい、お料理の品々がテーブルに所狭しと並べられる。


ラオスののどかな田園風景を思い起こす、ついつい箸が止まらない、グレープフルーツがアクセントの春雨サラダ

おせち料理の一品になりそうな、溜息が出る程しっとりと柔らかい牛肉細巻きに、とろりとした味わいの茄子炒め

ポルトガルの明るさを凝縮したような、クリーミーさに何度もお代わりをねだってしまうポテ鱈グラタン

秋茄子は嫁に食わすな、と言われる程のお茄子様の魅力が最大限に引き出されていて、色んな食材がブレンドされた豊かな食感に幸せを感じる、こんがりチーズ茄子ミートグラタン

ぎっしり、みっちりジューシーなお肉がふんわり、むっちりの生地に包まれた、思わずにんまりとしてしまう、特製肉まん

料亭の一品となろう職人技の、材料選びから下ごしらえの過程を愛情と手間暇かけて丁寧に作られたからこその味が心震わせる、柚子の香り豊かなサーモンの南蛮漬け


メルアドを三つも駆使して八面六臂の活躍をするので、休眠中のメルアドに連絡をしてしまっていて、当日の夕方に漸く会の開催を知り、慌てて駆けつけてくれるというので、手ぶらでいいよと何度も念を押したのに、惜しげもなくご提供いただいた、いよっ!これぞ日本の味!の餃子


選ばれた2019年のキリリと冷えたシャブリ。お庭のミントのソーダ。


プルーストではないけれど、一口食べると、あの時のあの時間のあの香りを想起させる、不思議な魅力のショコラマドレーヌ

表面はかりりとしていて、中はしっとり、ふんわりの、思わず姿勢を正してしまう、深まる秋を思わせる、甘さ控えめ、豊かな味わいの、色合いも美しい抹茶ケーキ

小粒のぷちぷち感が新鮮な果実と、削れば山椒の香りがぱっと爽やかに放たれる、お洒落なフィンガーライムを小粋に飾った、正にパーエフェクトなこんがりとした焼き色に、しゅわっと弾力性のある、濃厚な味わいなのに、羽のように軽い、スフレチーズケーキ


皆さん、天才。


犬を飼っていると知って、遠ざかってしまった友達に悲しい思いをしていただけに、心から楽しい時間を持てて、仲間たちに大いに感謝。お陰で、部屋は久しぶりに大掃除をして綺麗になり、サロンにあったラグは頑張ってお風呂場で洗ったことで、気になっていた匂いもなくなり、こざっぱりとし、グラスやお皿、ナイフ、フォークたちも、久しぶりに使ってもらえ、嬉々と輝いていた。


トンカには、私のお皿から肉まんを一瞬にして奪ってしまう事件も起こされたが、心配していた程大騒ぎもなく(と、思っているのは私だけかもしれないが)、お茶目ないたずらをして皆の笑いを取る程度で、意外に大人しくしてくれていた。トンちゃん、協力ありがとう。


友人たちとの尽きないおしゃべりの場は玄関に移り、外に出ると秋にしては穏やかな風がゆるやかに頬をなでた。



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2022年9月12日月曜日

あれから30年

 





留学仲間のブログを読んでいたら、我々が渡仏してから早30年もの月日が経ていたことを知らされた。30年か。


30年前の夏も異常に暑かったことを覚えている。あの時の陽射しの強さや、乾燥した空気、通りの香りまでもが鮮やかによみがえってくる。フランス語の夏期講習のクラスで、午後にポンヌフで待ち合わせをしてセーヌ河の船に乗った思い出。


若さがなせる業なのだろうか。フランス語など、ちっとも話せなかったのに、何とかなると思っていたあの日々。夢だけは大きく、世界を股にかけ飛び回って活躍しようと思っていた。何を持って活躍と言うのか、どんな分野で活動したいのか。そんなことはどうでもよかった。とにかく、根拠なき自信に満ち溢れ、幸せで、エネルギーが体中から湧き上がっていた。


あの時に戻りたいか、と聞かれれば、もう一度これまでの30年間を改めて生きることは、しんどいと思ってしまう。ただ、もしもあの時に戻ったとしても、恐らく同じようにパリに憧れ、上司、先輩、同期たちにも恵まれた職場を何ら躊躇なく辞めて、フランスに来るだろう。


人間は簡単には歴史から学ばないし、学べないのかもしれない。


それでも軌道修正したいこともある。後悔のない人生を歩んでは来なかった。ただ、困難な時期があって、今の自分があると思えば、貴重な時間だったと言えようか。


であれば、これを祝わずして何を祝おうぞ。久々に留学仲間に声を掛けて、皆で集まるのも悪くないだろう。我々の30年に、先ずは乾杯といこうか。



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2022年9月5日月曜日

艶やかな黒毛のジュル






 


一直線で遠くまで見通せる道を散歩していた時のこと。シルエットから、随分先に犬がいることが分かり、さてどうしたものかなと思いながら、大きさや犬種を見極めようとしていたところ、どうも飼い主さんがこちらを気にしている様子が窺えた。


それならと、大幅にペースダウンし、のろのろとした歩みにしてみる。トンカはその分藪は茂みに鼻を突っ込んで遊べるので、一向に気にせず楽しんでいる。が、それでもいつの間にかお互いの間隔は狭まり、遂にトンカの知れることになり、例のカンガルー跳びをして、挨拶を始める。


こちらを気にしていたのだから、さっと別の小径に入るか、急げば良いのに、と思ったものの、挨拶をして近寄ってみるとラブラドールっぽい艶やかな黒色のオス犬と、なかなか感じの良い男性でにこやかに挨拶を返してくれた。一緒に遊びたがっているのですけどよろしいでしょうか、と言ってみると、勿論ですよ、ただ、ちょっと怖がりなんですけれど、と意外な返事が返って来た。


二匹は鼻をくっつけ合って挨拶をしていたが、トンカが得意の追い駆けっこを仕掛け始めた。が、相手は乗ってこない。ボール遊びをしていた様子で、男性がボールを遠くに投げ、トンカも一緒に二匹でボールの追いかけっこが始まった。


つぶらな瞳が可愛い犬だったので、声を掛けると怯えた様子で後ずさりされてしまう。「人見知りというよりも、人間が怖いんです。」と男性が説明してくれた。幼い時に随分と人間に虐げられ、いじめられていたという。特に帽子を被った男性は苦手で、恐怖心が抜けられない、と言うので、慌てて被っていた野球帽を脱いだ。


男性が保護して3年になるが、まだまだ過去のトラウマを引きずっていると言うではないか。トンカよりも体は1.5倍は大きく、しなやかな体躯が美しく、愛らしい瞳を持っている。それでも、近付くと矢張り後ずさりをされてしまう。ボールを投げてあげたり、持っていた煮干しをあげてみたが、そう簡単に心を許してくれる様子はなかった。


だからこちらの方を気にしながら散歩をしていたのか、と納得。いつでも何かあったら守ってあげることができるように、アンテナを張り巡らせ、周囲の様子をうかがっていたのだろう。


敵愾心も警戒心もまったくないトンカとの散歩が、いかに気楽で楽しいものなのかと改めて思われる。ジュル、と呼ばれていたようだが、正式名称はジュニア。飼い主の男性には心を開いていて、ボール遊びも、ちゃんとボールを追いかけて拾っては、飼い主にところまで持ってくる。その度に、ジュルは飼い主の男性からご褒美をもらっていた。


うーん、犬のトレーニングはまめじゃないと効果がなさそう。どんな時でも、どんなに時間がかかっても、最後はちゃんと戻ってくるトンカに正直なところ満足している。トンカは気まぐれなので、ボールを取りに行かないことがあっても、まあいいかな、と思ってしまう。しかしそれでは、いつまでたってもボールを取りに行くことはないだろう。が、まあいいじゃないか。


幅広の道を行くというジュル達と別れ、茂みの中にある小径にトンカと一緒に入り込む。ジュル、また一緒にボール遊びをしようね。



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2022年7月13日水曜日

夜の散歩

 




ここ数日猛暑が続いており、うだるような暑さの中での夕方の散歩は、さすがに敢行していない。夕食後の20時以降になると、漸く涼風が感じられるので、待ち遠しくてうずうずしているトンカを連れて森に行く。


緯度が高いだけあって、夏は遅くまで明るいことがありがたい。それでも、森を散策する人影はなく、時々鹿に出会うだけで、鳥たちの囀りを耳にしながら、トンカが好き勝手に走り回る。


森の入り口にしかたどりつかない田舎道にも車の姿はなく、リード無しでトンカの軽やかなステップだけが響き、耳に心地よい。と、一本道の遠くにどうやら我々の様に夜の散歩を楽しんでいる人影が見える。大型犬と一緒の様に見受けられる。トンカはさっとカンガルーの姿勢になっている。


遠すぎて確認しにくいが、二人の女性連れで、犬はリードがついていない模様。従い、トンカもリード無しで問題なかろうと判断。彼らに近付くに従い、トンカのカンガルー跳びが激しくなるが、大丈夫だよ、優しく挨拶をするのよ、と声を掛け続ける。


二人の女性は、トンカのカンガルー跳びに歓喜している様子なので、安心しながら声が掛け合えるぐらい近くなってから、「ボンソワール。こちら7ヶ月のトンカです。彼女、そちらの犬君に挨拶をしたくてうずうずしているのです。ご挨拶しても、良いでしょうか。」そう、声を張り上げて言ってみる。


と、女性たちの歓喜の声はさらに高まり、満面の笑みで私の名前を連呼しているではないか。


なんと、こんなところで、こんな時間に出会うとは思いもよらない友人のカロリーヌ。バッタ達のバイオリン仲間のママ。10年以上も毎週、個人レッスンとグループレッスンに通い、定期コンサート、夏の研修、南仏特別コンサート、イルドフランス大会、リヨン全国大会、ユネスコ特別コンサート、イタリア遠征、ロンドンのアルバートホールでの記念コンサート、と数々を一緒に参加してきた仲間。友人というよりは戦友に近いかもしれない。参加といっても、バイオリニストである子供たちが参加するだけでなく、我々親も企画から運営までサポートすることが多かった。幾つものケーキを焼いたり、切り分けて皆にふるまったりと、親も大いに参加するタイプの音楽教室だった。


最後に会ったのが、彼女の三番目の娘さんが高校を卒業した時なので、もう4年になるか。あの時よりも、なんだか若々しく、溌溂としているカロリーヌをみて、こちらまで嬉しくなってしまう。


思い出が溢れんばかりに出てしまい、話も途切れることがなくなってしまいそう。近々会うことを約束して、子供たちの近況を簡単に交わし合い別れる。


トンカとの散歩は毎回思わぬ出会いを運んでくれる。涼風がなんて頬に心地よのだろう。しばらくは、夜の散歩を楽しむことにしようか。



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