ちょっとしたつまらないことで、末娘バッタと喧嘩をしていた。
多感な15歳。
母親の言うことばかりも聞いていられない年頃。
だからと言って、そうですか、と引き下がる親でもない。
当然、がっちんこ、ぶつかり合う。
毎日の夕食は末娘バッタが担当してくれている。
いつもは遅く帰っても食卓に準備が出来ていて、温め直してくれたり、ちょこちょこっとお肉を焼いてくれたりと、かいがいしい。
私が夕食を終えるまで食卓に一緒に座って、ぺちゃくちゃと賑やかに一日の出来事を色々と話してくれる。
ところが、がちんこ、の日にはひっそり。
どこで息をしているのかも分からない程。
あまりに疲れていて、食後も別の仕事が待っている時には、
彼女の存在を確かめることなどせず、
一人寡黙に冷たい夕食を終える。
負のスパイラル。
お互いに手を伸ばすこともせず、
関係が冷え込む。
そんな時、会社で、生きて動いている雲丹とぴちぴちと元気な海老、ラングスティーヌをお土産にもらう。
大きな馬糞雲丹。カタカナでバフンとしないと、申し訳ない程立派な雲丹様。
棘がちらちらと動いている。
ラングスティーヌは立派な鋏を動かして襲い掛かってくる勢い。
転がるように家路を急ぐ。
途中メッセージを入れるが、息子バッタからのんびりと返事がくる。どうやら、もうご飯は食べてしまった様子。雲丹とラングスティーヌの写真を送って、とにかく白米を炊いておくようにお願いする。
大声で帰宅を告げるが、ひっそり閑。
息子バッタは、案の定一人ごろ太をしている。末娘バッタは何処?
サロンは真っ暗。食卓は圧力鍋にご飯が炊いてあるが、誰もいない。書斎にも人影はない。一階と二階のトイレを確認するが、誰もいない。
まさか。
ベッドで蒲団を被っている塊を発見。
おおっ!
雲丹とラングスティーヌを持って帰ったよ!どうした?具合が悪いの?疲れたの?寝てしまったの?
むっくりと起き上がり、何も言わずに抱きしめられる。
すっかりと大きくなった彼女に窒息しそうに抱きしめられると、こちらが子供の様に感じてしまう。
さあ、とにかく見てよ!すごいんだから。
こうして、寝ていた筈の末娘バッタは起き出し、二度目の夕食を母親と一緒に囲む。
雲丹さま、ラングスティーヌさま。感謝いたします。
バッタ達との貴重な時間。感動を分かち合う。
美味しい食材のありがたさをしみじみと思う。
もとい、
家族のありがたさをしみじみと思う。
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皆さんからのコメント楽しみにしています
何も言わずに抱きしめる、一番小さいバッタさん、やってくれますね。こちらがうるっときてしまいました。
返信削除あかうなさん。
返信削除素敵なコメントをいただいていたのに、お返事もしておりませんでした。ごめんなさい。
ありがとうございます。
もうこちらは、すっかり夏です。あかうなさんのところは、ここどころじゃない暑さなのでしょうね。