思い込みの激しさなら誰にも負けないだろう。勿論、決して威張れない話ではある。信じ込みやすいタイプだし、今思い出しても赤面するエピソードなら、枚挙に暇がない。
学生時代、忘れもしない、あの学食で、クラスの皆と午後の時間を持て余していた。何の変哲もない小さなブラシを手にした黒メガネのクラスメートが、その類稀な性能を説明し、特許を取る準備をしていると得意そうに話してくれる。無視をするのも悪いので、そこそこに聞きながら、隣のクラスメートに、これこれしかじか、この小さなブラシはスゴイ性能を持っていて、と、伝えたものの、何の反応も得られずに、却って戸惑ったことを覚えている。嗚呼、田舎から出てきた自称カントリーキッド。都会の学生達の話をいつも真剣に聞いてしまっていた。しかも、自分が馬鹿にされていたとは露知れず、それを他人にも伝えてしまう馬鹿さ加減。
そういえば、やはり学生時代、駅でよく美容関連のセールスの女性に捕まったものだった。無視をしては悪いと、これまた真剣に聞いてしまう。ある時、勧誘してくる女性が私の反応を見て、「あなたの心は本当に穢れていない。こんな化粧や美容マッサージなんて実はなんの役にも立たない。とにかく、朝、一杯のお水を飲むといい。応援しているわ。」そんな類のことを言って、別の歩行者に向かって行ってしまったことがある。
なんの疑いもなく、真剣に聞き入ってしまうので、却って気勢が削がれたのだろうか。
もちろん、その話以降、毎朝、一杯の水を飲み続けているといったら、笑われるだろうか。
そう、アイガー(Eiger)、メンヒ(Mönch)、ユングフラウ(Jungfrau)の3つの名峰、「ユングフラウ三山」。この三山をヴェンゲンの村から見渡せると思い込んでいた。こうして、クライネ・シャイデック(Kleine Sheidegg)まで歩いていく間に、この三山を目の前にし、感動に立ち竦んでしまっていても、一度宿に戻り、窓から見える山脈を見つつ、いったい、どの山がどの山なのだろうと、悩みに悩んでしまっていた。お笑い沙汰である。
漸く、宿から見える山はユングフラウであることに思い至ったのは、最後の日。それまでの悩みが、氷解した時の驚き。そして、自分の馬鹿さ加減への呆れ。まったくもって呆れ果ててしまう。ヴェンゲンの村からユングフラウを見ることができるとの文章を、勝手にどこかでユングフラウ三山と入れ替えて思い込んでしまっていたのだろう。
だから、謎が解けた今だから、写真を見ても、すぐに山の名前が出てくるが、実は撮影した当時は、分かっていなかった。しかし、名前を知らなくとも、この三山の壮麗さ。雄大さ。ただただ、畏敬の念をもって見惚れてしまう。
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