トンカと競争して籠一杯に採ったミラベルを、新鮮なうちにお向かいのマダムに届けようと思った。マダムの庭では無花果、さくらんぼ、キーウィ―、パッションフルーツといった果物が採れ、いつもたくさん分けてもらっていた。
ミラベルを持っていくと大喜びで歓迎してくれて、丁度無花果をあげようと準備をしていたと鍋にたっぷりの無花果を手渡された。どうやら前日に採ったものらしく、大きくてぽってりとしている完熟状態で、とにかくジュースがたっぷりと出ていた。マダムは無花果が大好物だったが、ある時から無花果の実の小さな粒々が歯に詰まるので、もう食べなくなったとかで、いつだって申し訳ない程に多くの無花果をもらっていた。
ちょっと見に来て欲しいと言われ、無花果のことかと思いつつ、促されてキッチンに入ってみると、以前お邪魔した時にはガスコンロだったのが、お洒落なIHにとって代わっていた。恐らく、高齢なマダムにとって、ガス漏れや火の消し忘れによる事故のリスクがあるガスコンロよりも、IHの方が安全で掃除が簡単といったことから、お子さんたちが設置したのであろう。ところがマダムにとっては、そのIHこそが曲者なのであった。
パン、パンと指で何度もあちこちを押しながら、電源が入らなくなってしまったと嘆いている。IHにしても、幾つもの指令を同時期に複数回出され、困ってしまったのではあるまいか。論理的に理解をしようとすることなく、とにかく作動するように、叩きまくるといった原始的な姿勢こそが、マダムの家の電化製品がことごとく壊れてしまうことの大きな要因であることが、マダムのお子さん達には分からないのだろうか。
インターフォンから始まって、電話、掃除機、PC、タブレット、コーヒーメーカー、とにかくあらゆる電化製品が故障してしまう。マダム自身、この家には魔女がいると笑って言っていて、そんな時には、マダムこそが魔女なのですよ、と目で応じることにしている。
マダムの様な方には、ガスコンロが一番ですよね、と言えば、階下にガスコンロを残していると言う。取り敢えず、煮炊きに困ることはないらしい。日曜に息子さんが見に来てくれるらしく、先ずは安心してマダムのところを辞した。
我が家の門では、待ちきれずに、ちょっとした小さな窓の隙間を手を入れて、鼻を入れてこじ開けて外に出たのであろうトンカが、嬉しそうに迎えてくれた。
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