2012年10月11日木曜日

こんな日には、、、



どんよりとした鉛色の空から銀の粒が降り頻る、
こんな日には、、、

カルダモン、クローブ、シナモンの香り高いチャイを片手に、
お気に入りの毛布に包まって、
読みかけの本の世界に入り込んだり。。。

或いは、

規則正しいワイパーの音を耳にしながら、
いつになく真剣に前を向いている横顔を見つめて、
ギアに置かれた手の感触と、
時々注がれる眼差しを楽しんだり。。。

或いは、

空からの雫はいつだって温かく激しさを伴う彼の地に思いを馳せ、
もう随分、一行たりとも書き送っていない彼に、
近況をと筆を取るも、何も書くことがないことに呆然とし、
銀の粒が月桂樹の葉を濡らす音に聞き入ったり。。。

或いは、

乱雑に積まれているCDの山から
一枚を抜き出し、
音の粒が紡ぎだす新たな世界を楽しみながら、
その音の空間によって、溢れ出す思い出に暫し我を忘れたり。。。

或いは、
或いは、
或いは。。。



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2012年10月7日日曜日

予期せぬ返歌




気になる会議のプレゼン資料。
作成チームのメンバーを考えただけでも、恐ろしい。
一人は、絶対当てにならないタイプ。
最後までアイディアを出すポーズをとりながらも、
決して自分は汗を流さない。
それは、十分知り尽くしている。

もう一人。
彼は、最後の一瞬で、やるとなったらやるタイプ。
しかし、このところ、本業の仕事の方が大変らしい。
新たなコースを一つ抱えたとかで、メールを送っても、反応が鈍い。
二週間以上も音沙汰なし、なんてことも出てきており、
最終的にどうしても、となれば、
「今から寄るつもりだけど、家にいる?」
なんて、脅しのメールを入れる。
そうなると、慌てて連絡がくる。
そうやって、夜遅く、我が家で一緒に作業をしたこともある。

今回の会議は、そんなに力を入れなくても良いとは判断していた。
ただ、完璧な資料にはならなくとも、
何らかの資料を作成しなければならない。
彼がしないのであれば、私が揃えよう。
そう思い始めていた。

それでも、と、一つメールを書き送る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

****へ

あなたが素晴らしいことは知っているわ。
何でもできちゃうことも知っている。
スーパーマンだって、分かっている。

でもね、

あなたには一日24時間しかなくて、
肩が痛くて腕が上がらなくって、
そして、同時に複数の場所にいることはできない。

ねえ、今すぐ教えて。この金曜の夜20時に来るつもりなのか。
その日の為に、発表資料を準備するつもりなのか。

会議にあなたが来なければ、発表は完璧なものにはならないけど、それでも最善を尽くすことにするわ。
あなたには、いつだって来て欲しいけど。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

すると、
早速返事が来る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

****へ


僕は素晴らしいけど、君ほどではないよ。
何でもできちゃうけど、君には及びもしない。
スーパーマンだけど、君のスーパーさには程遠いよ。

そして、

僕には一日24時間しかないけど、君ときたら倍の時間があるみたいだよ。
僕は肩が痛くて腕が上がらなくって、
そして、同時に複数の場所にいることはできない。

さあ、急いで言うよ。この金曜の夜20時に行くつもりにしている。
その日の為に、発表資料を準備する時間はそんなにないけれど、手持ちの資料と、その場のアドリブでなんとかなると思うよ。

僕が会議に行かなければ、発表は完璧なものにはならないかもしれないけれど、君が来なければ淋しいし、確実に不完全なものとなるよ。

どう?安心した?

ビズ
****

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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ある土曜の晩のこと


いつもなら、
買ってきたばかりの、まだ表紙がぴんとしている本を片手に、
毛布にでも包まって、
ライムを皮ごと六つ切にして、三つほど潰し、グラスに放り入れ、
ミラベル酒をたっぷりと注いだ簡単なウォッカベースのカクテルを愉しみながら、
外の暗闇で小雨が月桂樹の葉を打ち付ける音に包まれて、
至福の時を過ごす筈であった。

先週から一晩たりとも5時間は寝ていない。

漸く金曜の夜で山を越え、
土曜の朝、朝露に濡れて光る屋根を見ながら、電話で最後の交渉をし、
お昼のキッチンで玉葱をまな板で刻んでいるときに、先方から譲歩の電話を受け、
慌てて午後のバイオリンのレッスンに駆けつけ、
長女バッタと末娘バッタを父親に預け、
息子バッタを友人の誕生パーティーに送り届け、
スーパーで一週間分の買い物をして、
一人、遅めの夕食を終えたところであった。

最近は、友達同士での連絡は自分達の携帯を使って。
携帯を持っていない息子バッタは、沢山の友達に恵まれていても、
彼らの連絡先を知らない。
彼らも、息子バッタの連絡先を知らない。

そんなことだから、
近所の仲間と誘い合わせて行けば良いし、
帰れば良いのに、
連絡できない状況で、仕方なく、私が車を出すことになっていた。

夜11時にお開き。
それこそ、いつもなら、土曜の夜11時などは、全く問題のない時間帯。
それでも、昨日に限っては、正直、倒れる寸前。
雨が寒さを呼ぶのか、
人気のいない大きな家が寒くなるのは当然なのか、
身体の芯が冷え冷えしてくる。
いつでも出陣できるように、外套を着込み、
キッチンの椅子で本を読み始める。

夢中になって、時間を忘れるといけないから、と目覚ましをセットする。

そうしているうちに、
携帯の音に揺り動かされる。
どうやら眠ってしまったらしい。

外に出ると、オレンジの街灯の回りが、まるで雪でも降っているかのように、霧雨が降り頻っている。

5時間前に息子バッタを降ろした場所に駐車し、
渡されたコード番号を押してみる。
なんの反応もない。
訝しげにプレートを見つめると、
番地が指定のものと微妙に違う。
そうか、ここじゃなかったのか。
5時間前の息子の足跡を辿る。

暗い夜道は、ひっそりとしていて、霧雨で顔を濡らしながら、
小説の一場面のような気分になっていた。
遠くで、賑やかなパーティーの音がする。

漸くたどり着いた大きなマンションの玄関でコード番号を押して、
重い扉を入る。

こんな時、息子バッタが携帯を持っていれば、本人に連絡をして、外に出てもらえるのにな、
との思いが頭を掠める。

中庭を入り、複数の建物の中から、一つ選び、新たなコード番号を押す。
さあ、一体、パーティー会場はどの階のどの部屋なのか。
招待状には、建物の前のコード番号を記されている以外は、何もない。
招待者の名前はファーストネームだけ。
これでは、調べようがない。

まさか、中庭で大声で彼を呼ぶなんて事は、できまい。
ローティーンの仲間入りをした彼に、
一生恨まれてしまうだろう。

と、インターフォンの近くに手書きのメッセージが。
今晩、誕生会をするので、賑やかになりますが、予めお詫びします。
どうぞご寛大に。
そこには、ちゃんと氏名が署名されている。

漸く、家族の名前をプレートから呼び起こし、
呼び鈴を鳴らす。

「ハーイ!どちら様?ご用は?」
素っ頓狂な若い女の子の声。
パーティーの終わりの時間でもあり、
そろそろ親が迎えに来ることぐらい、分かっても良さそうなもの。

ちょっと、そう、ちょっとだけ、むっとする。

そして、諦めて、息子バッタの名前を告げて、迎えに来た旨を伝える。

「えぇっ?なんですって?」

今度は、かなりむっとして、低い大きな声で、息子バッタの名前を告げる。

「あ~ら。は~い。」
漸く、建物の中に入れてもらえる。

それにしても、何階のどこなのか。

すると、目の前の扉がさっと開き、
お化粧をしていながらも、未だ幼い表情の女の子が出てくる。
携帯を手にしているところを見ると、
迎えが来た知らせで、会場から出てきたのか。

「二階です。」
意外に優しそうな表情で、その子が教えてくれる。
「出てきてくれないかしらね。」
そう言うと、一瞬、困った顔をして、立ち止まる。
「いえ、いいのよ。」
溜息をついて、覚悟を決め、階段の扉を開ける。

華やかな誕生会の会場に顔を出す気分ではちっともなかった。
しかも、昔のような誕生会をイメージしていたが、
すれちがった少女、いや、マドモワゼルの様子では、
ちょっとしたパーティー。

と、息子バッタが駆け下りてくる。
一言も発していないのに、
「ママ、ごめん。」
と言って、腕をとる。

「疲れているだけ。」

「ママ、車、停める場所、あった?」

「そうだ。住所違っていたね。あそこじゃなかったんだ。」

そういって、
雨が降り注ぐ中、腕を組みながら、
二人で笑い合う。
暫く笑い合っていると、
雨に濡れそぼって、街灯の光にきらめくシルバーの車体が現れる。

幸せとは、どこに転がっているのか、本当に分からないもの。
うきうきとした気持ちでアクセルを踏む。



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2012年9月27日木曜日

セ モワ


この夏から携帯の調子が思わしくない。
SMSの受信を知らせてくれない。
気がつくとメッセージが入っていることが多い。というよりも、確認しないとメッセージの有無が分からない。
受信の度に震える設定にしておいたので、これまでは震動が心まで伝わる時もあり、
あのゾクゾク感がなんとも言えなかった。
瞬時、というタイミングも悪くない。
灼熱の太陽の下で、
賑やかなオフィスの中で、
砂浜に寝転がりながら、
と、相手のシチュエーションを想像しながら、
字数にして僅かなメッセージを堪能する。

短いことで、こちらがいらいらしている時には、勘違いをし、
或いは、却って深読みし、
とんちんかんな返答をすることもなくはないが、
突然の電話よりも、慎み深い気がして、
相手の時間を拘束することも少ないと思われ、
SMSを送ることは少なくない。

逆に言えば、
私自身が突然の電話を避けることが多く、
SMSでの連絡を有難く思っているともいえようか。

いつの頃からか、自宅に掛かってくる電話は取らなくなった。
何とも傲慢な考えではあるが、
自分の用事は能動的に私からの電話やメール、SMSで済ませているので、
他からの連絡は受け取らなくても、と、
一人ソファーに深く座り込んで本を読んでいる時など、特に、
電話を鳴らしっぱなしにしてしまう。
どうしても連絡をつけたい人は、メールをくれるだろうし、
家族、友人は勿論、学校関係の知り合い、会社関係のつながりの人も、携帯番号を持っているはず。

では、携帯なら、電話を取るか、となるが、
実は、これも、ほぼ取らない。

なんと厭世的なと思われようが、
電話で話をする気分になれないのだから仕方がない。

ただ、これは週末に限ってのこと。
しかも、数年前は違っていたか。
突然突きつけられた一人の時間、それは決して自由の時間ではない、孤独の時間を過ごすことになって、いつの間にか習慣化してしまったのであろう。

それでも、後から着信履歴を確認し、
相手が判明し、必要あれば電話を掛けることにしている。
基本的には人と話すことは好きであり、
単に、人と話す心の準備ができていない時もあるというだけのこと。

そんなことで、
この間も、携帯のメッセージをまとめて聞くことにになった。

曜日と時間を聞けば、ほぼ誰からかのメッセージか判断できる。
折り返した相手のメッセージがほとんど。
と、夜遅い時間が告げられる。
バッタの父親に違いない。
果たして、彼の声が聞こえてくる。

セ パトリック アラパレイユ。

えっ。

彼の低いぼそぼその声が続くが、
私の思考は一旦停止してしまっていた。

もう20年も前のこと。
東京の我が家から、彼がパリに住む友人に電話を掛ける。
「セ モワ。」

当時、未だフランス語ができない私でも、その意味するところは分かった。
所謂、声を聞けば分かる相手への呼びかけ。
「僕だけど。」

その時の電話の用件は、フランスの大学院のパンフレットを入手し送付して欲しいとの依頼であり、正に私の為であることは分かっていたが、
二人の、その余りの親しい関係に対し、
大いに嫉妬を感じたもの。

電話の相手が昔の恋人であったこと以上に
彼らの会話のほとんどが分からなかったことが、
嫉妬の感情を高めたと思う。

あれから、20年という年月が流れ、
彼とは、子供の父親と母親という関係だけになったが、
それでも、週末のこと、教育のこと、休暇のこと、と
ことある毎に電話がある度に、
「セ モワ」 から会話が始まっていた。

違和感を感じるが、
それでも、相手が誰だか分かるし、そんなものかと放っておいた。

と、
今回のメッセージ。

突然の距離感。
そして、遂に他人になったことが、強烈に伝わってくる。
解放された、との思いが、しんみりと心を満たす。



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2012年9月26日水曜日

雨の日にはサングラスを




どんよりとした雲が立ち込めていた空から
遂に冷たい粒が降りしきる。

9月も最後の週に入ってしまい、そろそろ夏時間も終わろうとしていることに気がつく。
秋分の日が過ぎてから、朝、家を出る時に車のヘッドライトが必要になっていた。

夕闇が迫っているのか、銀の粒はどんなに降り注いでも、空は一向に明るくならない。
ワイパーのスポンジが古くなってきたのか、フロントグラスを軋みながら雨粒を弾き出している。
こんな日は、道路は混み勝ち。
それでも、トンネルに入ってから、車の流れの勢いは変わらず、
ちょっとしたスピードまで出しながら、トンネルの向こうに光が見え始める。

と、後方から迫る車が目に入る。
キラリとしたヘッドライトに、白い車体。
ひょっとしたら、との思いが過ぎる。
ナンバープレートを確認しようにも、やや遠過ぎる。
いや、番号を見たところで、実は、確認のしようがない。

エンブレムが見え、
思い描いていた車である可能性が濃厚であることが判明する。

トンネルを抜けると、他から入ってくる車線との合流地点にさしかかり、
勢いスピードダウン。

サングラスに、白いシャツ。

どんぴしゃり。

バックミラーに台湾の妹から贈られた犬のお守りをかざす。
サングラスの口元から白い歯がこぼれる。

どんぴしゃり。

車が流れ出すと、
激しく雨が降りしきり、
銀色の世界が広がる中、
見失わないように、バックミラーで確認しつつ、
流れに沿って走る。

まぶしい銀の雨の世界は、光の反射で見えにくい。
サングラスをかけてみると、
落ち着いた色彩が戻ってくる。

雨にはサングラスが一番。

暫くすると、国道に出て、信号の赤で並ぶ。
ゆっくりと窓を開け、サングラス同士で挨拶。

見上げると、銀の世界が開け、青空に虹。



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2012年9月21日金曜日

クイックランチ



地下の暗がりの駐車場に慌てて車を停めて、
地上に上がるちょっとした坂を小走りに上って追いつき、
さっと、手を滑り込ませる。

そんなことが嬉しいの、
と、
呆れたような、驚いたような、
はにかんだような、
ふわりとした笑顔が返ってくる。

その間も、聞いてもらいたくて、
専門的アドバイスが欲しい一件を
ちょっと興奮気味に話し続ける。

お目当てのレストランが改装中。
ライオンのような笑顔で迎えてくれるエジプト人の叔父さんが、
ペンキ塗りに勤しんでいる。

迷わず、隣の小ぶりな食堂に入ると、
これまた非常にオリエンタルな雰囲気。

黒いアイシャドウで切れ長の眼を強調させた若い女性が、
今日のお勧めめを紹介してくれる。
それにしようとしたら、未だ残っているか確認してくるという。
それならば、お勧めなんて言わなければ良いのに、
と可笑しくなる。

漸く、5つのポイントを説明し終え、
今度は、一つ一つ、私なりの考えを伝え、意見を聞く。

どうも、1点だけ、良く分からない。
理解力不足で申し訳ないけど、と、何度も別の例を挙げ、
理解に努める。
そして、今度は解決策を模索する。

ああでもない、こうでもない、
こうだったら、と言っていたら、
嬉しそうな、にこにこの笑顔とぶつかる。

あまりにも、夢中だったので、ちっとも視線に気がついておらず、
一瞬、戸惑い、
今度は恥ずかしくなってしまう。

忙しい中、出てきてくれて、
話を聞いてくれ、
何度も分かるまで説明してくれ、
じっと理解するまで待ってくれ、
そして、今度は一緒に解決法を考えてくれている。

元気が湧いてくる。
よし、この線で悪くあるまい。

コーヒーも飲まずに、
急いで食堂を後にする。

ありがとう。
クイックランチに、クイックビズ。

次回はぜひゆっくりと。

今にも泣きそうな空から、はらはらと銀の粒が転がり落ちてくる中
オフィス街に車を向ける。



 
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2012年9月16日日曜日

秋の空に台湾の姪や甥を思う




9月に入りのどかな秋晴れが続いているのに、きな臭い話がこのところ多過ぎる。

エジプトやリビアでは米大使館、米領事館が襲撃され、リビア大使を含めた4人が銃殺されるという衝撃的事件が相次いで起こっている。
バングラデシュやアフガニスタンでは星条旗が焼かれ、反米デモが繰り広げられている。
いや、どうやら、それだけで収まらず、ここ二日ばかりで、世界各地にムスリムによる反米デモの動きは飛び火している。
アメリカ合衆国で制作された映画「Innocence of Muslims」が、ムスリムを侮辱するものであるとして、これに抗議する動きが発端という。
確かに映画の内容は、ムスリムであったら怒りを覚えるものかもしれない。
だからといって、大使射殺となると、どうも狙いは別にあるのか、と思ってしまう。
切っ掛けを待っていた動き。

翻って、
中国全土に広がっているとされる反日デモ。
長らく個人の所有であり、政府として賃貸料を支払っていた尖閣諸島のうち3島に対し、ここにきて、9月11日に日本政府が地権者より購入。
一方で、これまで領有権を主張してきた、中国政府、そして台湾政府の存在があり、
各地で反日デモや暴動に発展してしまっている。

台湾は中国との関係もあり、
かなりの親日であり、
台湾人と結婚して当地に住む妹も、日本人として大いに歓迎されていると話しに聞いている。
実際、何度も遊びに行ったが、毎回楽しい思い出ばかり。
(実は、日本人に英語で道を聞かれたり、ホテルで中国大陸の人だと思われたり、郵便局でフィリピン人と間違えられたりと、台湾で日本人と思われて話しかけられた例はない。)

ところが、
ふと気になって、妹は小学4年と6年になる子供達に何か困ったことはないかと聞いてみたらしい。
すると、期せずして、子供達はある、といったという。
小学6年生の姪は、社会の先生が黒板に世界地図を貼って、日本は魚が欲しいから、無理やり土地を取ったひどい人々です、と説明したという。
何も言えず、静かに耐えることしかできなかったであろう、姪の小さな痛んだ胸中を思いやって、こちらまで涙ぐんでしまう。
小学4先生の甥は、クラスの少年から、日本は自分の土地だって言っていながら、お金を払って買った馬鹿、と罵られたらしい。大人の話を聞いての受け売りだろうか。ナルホド、大衆のセンスでは、そうなるのか。と感心する一方で、自分のママが日本人であるだけで、馬鹿にされて、でも、言い返せずにいた甥を思って、悔しくて辛かっただろうな、と思う。

その話を、バッタ達にしてみる。
そもそも日本の領土問題を知っているのか?
台湾のいとこたちは、辛い思いをしているんだよ。

驚いて、悲しみ、一体何が起こっているのか詳しく知りたがるであろうと思っていた。
が、意に反して、バッタ達の反応は冷たい。
学校では、差別発言は日常茶飯事、という。
いちいち、そんなこと気にしていたら一日が終わらない、と。

日本人は、黄色といわれ、食堂でバナナが出れば、おい、どっちが黄色か、と揶揄され、黄色いTシャツでも着ようものなら、大いに馬鹿にされるらしい。
一方、ドイツ人は、歴史の時間、皆にコテンパに言われるらしい。大量虐殺、ジェノサイド。
ポーランド人は、貧乏で道楽者。
イタリア人は嘘つきでペテン者。

ちょっと、ちょっと!

「あ、でも、みんな気にしていないよ。」

あっけらかんとしている。
それぞれが、自分の個性として自覚しているというのか。

そして、付け加える。
「でも、日本から来たばかりで、そんなこと言われたら、嫌かもね。」

この一言には唸ってしまう。
母国を離れることで、自分の国籍、人種、民族、文化、宗教などを、自分の個性として自覚しやすいのではないか、と。

いや、領土問題が残っているではないか。
そちらに話を向けようとした時には、
バッタ達は既に、もうどこかに跳んでいってしまっていた。

頼りになるのか、困ったことなのか。。。

それより、中国での暴動はますます大きくなっているらしい。
どうか、うまく沈静しますように。そして、間違っても台湾に飛び火しませんように。

秋の空は、あくまで澄んで青く拡がっている。






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