「一人は美しい」
数年前に読んだ友人のブログ。
彼が一人、ギリシャに旅行して、
地中海を前にしてつぶやいたセリフ。
とてもじゃないけど、そんな境地には未だなれそうにもない。
でも、誰かが一人だと、周りは心配するのだろうか。
このところ、立て続けに不思議なことが起こる。
先ずは、仲間から夕食の誘いを受け、
陽気も良いし、さて、と出かけていけば、
彼は会社の同僚を連れている。
すぐに、ピンとくるものがある、そして、咄嗟に困ったな、と思う。
その人は気さくな男性で、私たち三人の話は弾む。
友人が席を立った時に、
君に会えて嬉しい、といったことを言われ、
ついては、ぜひ、これからも会って欲しい、と言われる。
正式なお付き合いをしたい、らしい。
ちょっと、待って。
なんでそうなるの?
彼は、バツイチ。もう成人した子供が二人。
誰かとの出会いに飢えているのだろうか。それで、友人に誰か紹介して欲しいと頼んだのだろうか。
真剣な表情に戸惑う。
そして、曖昧に返事をはぐらかす。
人との出会いに、正式なお付き合いの申し込みなんて必要あるだろうか。
視線を交わしたり、
ちょっとした仕草でお互いに分かり合うものなのではないだろうか。
相手の魅力に惚れ込んでしまった時は、
いつでも、ふつふつと思いが滾ってきて、
隠すのがやっと。
相手の強い視線が、更に熱き思いを冗長する。
きっと、今回の彼は、私からは何も感じ取れなかったのだろう。
だから、正式なお付き合い、なんて言葉が出てしまったのだろう。
そんな彼に何が言えようか。
帰りに、駐車場まで見送ってくれ、ついでに、コンコルド広場まで乗せて欲しいと言う。
夏の夜とはいえ、その夜のコンコルド広場は、いつも以上の混雑。
一体、この車の流れを遮って、どこに停めればいいのか。
シャンゼリゼまで、いや、もっとそれ以上もついてきてしまいそうな感じが急にして、
往来の真ん中で、赤信号で停止した時に、
今が降りるチャンスよ、とばかりに、さよならを言う。
周りの車からは、珍しげな視線が飛ぶ。
最後まで紳士の彼は、ありがとう、ここで十分だよ、と降りていく。
また別の話として、
長女バッタのクラスメートの父親からメール。
仕事の話がしたいから、空いている夜に会わないか、とのお誘い。
しかも、美味しいワインを冷やしておくから、と書いてある。
更には、携帯に連絡が欲しいと、携帯番号まで明記されている。
これには、一体どう応ずべきか大いに迷ってしまう。
知らない仲ではないが、一対一で会って話をする仲でもない。
ましてや、家族のいないところに誘われて、ワインを飲む相手でもない。
考え過ぎなのだろうか。娘のクラスメートのお父さん。
下心なんて、あるはずがない。
いや、どう考えても変だし、母親が後で知った時のことを思うと、危険信号がなり続ける。
彼は、私が一人だから、誘ったのだろうか。
下心があったにしろ、ないにしろ、一人だから、放っておけない、と思ったのだろうか。
そうして、今日。
週末に台湾の姪っ子甥っ子たちが遊びに来る前に、
伸び放題のお庭をなんとかしなきゃ、と
芝刈り、雑草取り、松や杉の木の伐採をしていると、
前の家のマダムが、真剣な顔で寄ってくる。
「今晩は一人なの?」
えっとぉ。
答につまっていると、夕食のお誘い。
大変ありがたいけれど、そして、本当に一人なんだけど、
びっちりと予定があって、とても食事には寄れそうにないことを
丁寧に話してお断りする。
ちょっとだけで、簡単な夕食にするし、時間なんか取らせないわよ、と尚も誘われる。
先日、ご主人をなくしたマダムの名前を挙げて、彼女も呼んでいるという。
「だから、ぜひ来て頂戴。一人で、寂しいでしょう。」
辛そうに、こちらを見つめる。
暇ではない一人もいるのだし、本当に今晩は一人なんだけど、忙しい。
だから、丁寧に、丁寧に、もう一度お断りする。
というか、したつもりだった。
と、18時半。
電話が鳴ると、前の家のマダム。
夕食の時間だから、待っているとのこと。
慌てる。
80歳のマダムをがっかりさせたくない、と、出ていくことにする。
不思議と言っては甚だ失礼なこと。
この三人の方々には本当に感謝しないと。
多分、ちょっと前までは、一人が辛かったに違いない。
与えられた自由なんて、自由ではない、なんて嘯いていた気がする。
実は、今は、ちょっと違っている。
愛する人々、仲間たち、友人たちとの一緒の時間は勿論、貴重だが、
その合間の、一人の時間も悪くない、と思っている。
そう思うのも、今日は一日中の庭仕事で、体の芯から火照る程に疲れているからか。
さっぱりと刈り取られ、
呼吸を再開したかの様な庭には、
暑さのためか、このところ見かけなかったルージュゴージュやピーが遊びに来ている。
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