外に出てみると思った以上の土砂降り。慌てて傘を手にする。
先日、前輪のタイヤの溝が減ってきているから、そろそろ交換時期だと言われたことを思い出す。さりげない気遣いは素直に嬉しい。しかも、車のタイヤなど滅多に気にしないドライバーとしてはありがたいこと。以前、助手席に乗っていた同僚がガソリンスタンドに寄ろうというので、訝しげに思いつつも車を乗り入れると、タイヤの空気圧を点検してくれ、やっぱりとつぶやきつつ、調整してくれた時も、驚くやら感謝するやら。純粋に車好きとのことだったが、彼に対するポイントが急上昇したことは言うまでもない。
今回も、くだんの友人に対して大いにポイントは上がるが、タイヤはまだ交換していない。そして、この雨。
雨脚はどんどん激しくなり、国道に入ったところで滝の中に入ったようにワイパーは全く役に立たなくなる。真っ白なフロントガラスの向こうに辛うじて先行車のテールランプが赤くぼやけて見える。
いつもなら時速100kmは軽く出す場所で50kmに抑えて走行。こういう時は無理せずにスピードを落とし徐行すべきであることは頭で分かっているし、いざとなれば路肩に停車すべきことも分かっている。が、実際のところどうなのだろう。後続車のことを思うと、視界が良くない上、前の車が突然停止したことに気が付かずに、慌ててブレーキともなれば、それこそ、事故の原因になりはしまいか。
かなり神経を擦り減らし、目的の駐車場に慎重に車を乗り入れる。通りを渡るだけのために使った、助手席でぐっしょりとしている大きな真っ黒な傘を取り出し、電車に駆け込む。朝の早い時間だからか閑散としているが、車両の中も濡れていて、雨雫を垂らした傘を持った利用者が少なくないことを物語っていた。
しばらく揺れてからメトロを降り、薄暗い地下道を歩いて階段を上りかけ、地面が乾いていることに気が付く。まさか、パリは晴れていたのか。
地下鉄を抜けると、そこは晴れていた、か。
なんだか笑いがこみあげてくる。
びっしょりと濡れた真っ黒な蝙蝠傘を広げて差す。晴れ上がったパリの朝の空気はまぶしく、からりと乾いた地面は拍子抜けするほど明るい。
命からがらでの滝の雨の中のドライブは、一体何だったのだろう。
スキップを踏みながら傘から雨雫を飛び散らす。
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