2017年2月14日火曜日

大豆を煎る










どこにでもありそうなのに、ないものって、少なくない。
たとえば、コーンスープ。

バッタ達が大好きなコーンスープ。日本ではクノールの美味しい粉末のインスタントがスーパーならどこにでも売っているのに、フランスにはない。そもそも、トウモロコシとは、家畜の餌。

だから、夏に茹でると美味しいトウモロコシもマルシェにはない。

最近、八百屋で見かけるようにはなったが、一般的ではない。



そして、大豆。

あれだけ身体に良いとメディアでももてはやされているのに、大豆そのものが売っていない。大豆ミルクもとい豆乳はロングライフものが販売されている程度。

新鮮な手作り豆乳を、なんて日本の母が張り切って作ってくれようとしても、大豆がスーパーにも八百屋にも、自然食料品店にもないのだから困ってしまう。納豆を作っている方がいるので、恐らくどこかでは手に入るのだろう。日本食料品店だろうか。一般的ではないことは確か。

それがどうしたことだろう。
ロッテルダムの長女バッタが良く行くスーパーチェーンに大きな大豆の袋を発見する。
丁度豆まきの時期。迷わずに買い物かごに入れる。

長女バッタがこちらを見て、笑っている。

ふと、手が止まる。

そうか。この子の口には入らないのか。

大きな袋に大量に大豆が入っているので、少し彼女に残して行こうか。
大豆はオーブンかフライパンで煎れば香ばしい美味しい豆がすぐにできる。
簡単だよ、と教えてあげても、さて、彼女は作るだろうか。

なんだか切なくなる。

「ママ、フランスにはないんだから、全部持って行ってよ。私はここで買えばいいんだもの。」

そう長女バッタは言う。


そうしてロッテルダムから持ってきた大豆。
水に浸してふやかしてから、オーブンで煎る。
しばらくすると、キッチンが何とも言えない香ばしさに満ち溢れる。

かりりと齧れば、控えめな甘さが口いっぱいに広がる。

食べさせてあげたいな。

彼女も、いつか大豆をオーブンで煎りながら、幼い時の豆まきに思いを馳せることもあるだろうか。

さあ福茶を頂こう。










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