早朝4時のオリャンタイタンボの村は冷気が感じられ、真っ暗闇に人っ子一人おらず、ひっそり閑としている。我々の足音のみが響く。突然、バイクタクシーが現れる。駅までは歩いて15分と聞いていたが、暗闇であり、荷物を持っての移動でもあり、せめて荷物だけでも車で運んでおきたかった。乗る意思表示をし、バッタ達に荷物を預けるように言い渡し、母と二人で乗り込もうとすると、もう一台欲しいのか、と聞かれる。確かに、ここでバッタ達と別れることは賢明な判断ではないかもしれない。と、ドライバーが口笛を吹くと、もう一台、闇の中から現れる。
思った以上に駅までの道のりはあり、バイクタクシーに乗車できで良かったと思うのも束の間、そこだけ幾つものお店が明りを放っている通りで降ろされる。慌ててミネラルウォーターと熱々の茹でたジャンボトウモロコシを購入。さて、駅に向かおう、と思うが、実は駅が見当たらない。駅、という概念自体が、ここでは違うのかもしれないと思うと、不安が募る。そこにいる人々は右往左往しており、一体どこが駅で、電車が止まっているのか分からない。バックパックを背負っている西欧人と思われる二人連れに声を掛けると、女性の方が彼らの後方を指し、あちらだ、と言う。そして、震えんばかりに、何もないので寒いわよ、と言い残して行ってしまう。
言われた方に向かい、早歩きで進むと、確かに何かの入り口らしいところで、乗車券のチェックをしている。どこにいたのだろうと思われる人が並んでいる。プラットフォームなどあるのか分からない。そこに停車中の電車の車内の光が唯一の明るさであり、そこに吸い込まれるかのように、人々がそれぞれに入っていく。
電車に乗り込み、指定された席に落ち着くと、漸くマチュピチュが近くなったように思われた。ジャイアントコーンの淡白で、にっちゃりとした味わいは、ぷっつぷつの日本の美味しいトウモロコシを知っているバッタ達の口には合わなかったらしい。が、マチュピチュに向かっている我々には格好の朝食に思えてならなかった。
かくして、高揚する気持ちを持て余しながら、真っ暗闇の車窓を見つめつつ、一睡もできずに電車に揺られていった。
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皆さんからのコメント楽しみにしています
忍耐あれば成就あり。
返信削除匿名さん、
返信削除コメントありがとうございます!
仰る通りです。そして、旅での忍耐は、未知への憧憬と期待に満ちたものです。
予想以上に長くなっているペルー紀行ですが、よろしかったらぜひ続きもお読みください。