紺碧の空に大きな満月。
あれ程分かりやすく兎が餅をついているのに、
国によっては、全く違った柄を見るというから、
いつだって不思議に思ってしまう。
夜のパリは混雑しているようで、
時間帯が皆がレストランで楽しんでいるときだったからか、
思った以上にスムーズに進む。
途中から首に手を回される。
末娘バッタ。
運転中だからと、止めてもらう。
すぐに帰ってくるんだもの。
彼らに、というよりは、自分自身に言い聞かせていた。
その晩は、ちょっと早目の夕食にして、
前日から準備しておいたクネルをオーブンで焼く。
ピンク色のサーモンがふっくらと、ミルク色のベシャメルソースの中で大きくなる。
その秘密は練りこんだシュークリームの生地。
今回は、赤唐辛子をちょいとだけ入れて風味をつけていた。
コリアンダーと胡椒の香りに混ざって、
ピリリとした味わいが、ふっくらとしたクネルととろりとしたソースのコンビネーションに締まりをつけている。
もちろん、バッタ達からはブーイング。
でも、熱いから、辛く思うのよ、と誤魔化してしまう。
冷たくした白が欲しいところ。
二週間続けて毎日弾いているから、と、
末娘バッタはバイオリンを持って行くと言っていた。
が、車に積む段階で、
サロンに置きっ放しにしてあるケースが目に入る。
ちょっと考えて、
何も言わないでいることにする。
私と一緒なら、もちろん、どんなことをしても持たせてあげる。
でも、場所がないから、と、
あちらで置いてきぼりにさせられるかもしれない。
ちょっとだけ、胸に痛みが走る。
あっという間に、
といっても、小一時間はかかって目的のアパートの前の通りに着く。
荷物を降ろしたバッタ達と、
ビズをして、
さっと車に乗ってしまう。
ママ、お月様だよ!
バッタの、誰の声だったか。
帰りの方がスムーズで、
真っ暗闇の我が家に着く。
と、玄関にオレンジの灯り。
ジャカランタン。
先日、末娘バッタが、どうしても欲しいとスーパーで大きなカボチャを選んでいた。
息子バッタが、フランスのカルチャーではないから、と、非常に馬鹿にして、どうしても買わないと大騒ぎ。
そこを、まあまあ、と宥め、買っていた。
末娘バッタが長女バッタと早速取り掛かり、
息子バッタが外に遊びに行っている間に作ってしまった。
結構、なかなかの出来栄え。
カボチャのお化けに迎えられ、
オレンジ色に包まれて我が家の戸を開ける。
ふっと蝋燭を消し、
大きなお化けを腕に抱えて、一緒に家の中に入る。
重みが腕に心地よく、なんだか、にんまりしてしまう。
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