動かなくなった鉄の塊を相手に、
街が起き始めるまで冷たい車の中で待つことを、
ここ数日の間に2度も繰り返す。
以前だったら、
どうしたら会社に遅れずにたどり着けるか、
如何に時間を有効利用するか、
など賢明に考えたものだが、
今回は、そんな気にもならずに、
そんな自分を悲しく見つめる。
二回目は、流石に溜息が漏れ、
整備会社を罵る思いが膨らむ。
が、
親切、フレンドリーであること、と、サービスの質は比例しないし、
安いのは、安いなりの理由があるものだと、
変に納得する。
朝7時を過ぎても、
一向に街は起きないし、
夜の暗闇をまとった空の下、
通る車もない。
流石に子供のいる家庭は起きているだろうと、
2人目の近所の知り合いに電話をするが、
やはり、どうやら起こしてしまったらしい。
パジャマ姿だからと言う相手に大いに恐縮し、
ちょっと遠くはなるが、起こしても気にならない友人に電話をする。
案の定、寝起きの声がする。
30分は待ってちょうだい、との返事に、大きく頷く。
そうなのか。
朝7時は、未だベッドでぬくもりを楽しんでいる時間帯なのか。
もうすぐ、そんな時間が私にも訪れることになるのか。
と、先ほどのパジャマ姿と言っていた近所の知り合いから電話。
未だ助っ人が来ていないなら一っ走り寄るわよ、と心配して声を掛けてくれる。
3軒隣でもあり、ありがたくお願いする。
トヨタの新車がぬっと暗闇から現れる。
高校生のお姉ちゃんが昨晩、急性胃腸炎で吐き、
本人も小指の爪が剥がれたとかで、包帯をぐるぐる巻きにしている。
そして、会社から一日お休みをとったという。
そういう彼女に、申し訳なさで一杯になる。
バッテリーをつなげ、エンジンをかけると、
いつもの軽やかな音がして、エンジンがかかる。
鉄の塊が、自動車に変身する瞬間。
車の故障、なんて、些細なことなのであろう。
が、動かなくなった鉄の塊を前に、
本気で人生を止めたくなる。
それでも、
なんとか、かんとか修理し、動き出すと、
ああ、人生も同じかな、と。
辛いことがあっても、いつかは解決策が出てくるものなのかな、と。
人間は、いつの世も幸せ探しの旅を続けているのであろう。
山の彼方の空遠く、幸い住むと人の言う、
ああ、我、人と とめゆきて 涙さしぐみ帰り来ぬ
山の彼方に なお遠く、幸い住むと人の言う。
カールブッセ
カールブッセ
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