良いニュースと、悪いニュースがあるんです。
どちらからお話ししましょうか。
やわらかな笑顔が返ってくる。
閉店間際に慌てて駆け込んだ自動車整備会社にて。
うっかり電話が長引いて、
愛車を取りにいく時間を忘れてしまっていた。
ドキリ、とする。
スイッチを切ってもラジオの電源が完全に切れずに、どうやら電流が流れたままになり、
どうにかすると、エンジンがかからない事態になっていたことが判明しており、
ラジオの交換をお願いしていた。
まさか、エンジンか。
急速に疲れが襲う。
1500ユーロ近い出費となるのか。
眩暈さえ覚える。
そんなこちらの気持ちを知ってか、知らずか、
受付の丸顔の紳士は穏やかな口調で続ける。
では、悪いニュースからとしましょうか。
ラジオの交換ができなかったのです。
予定されていた品物の入荷が遅れてしまい、明日以降になってしまいます。
ああ、なんだ、そんなことか。
ほっとする。
では、良いニュースとは一体なんなのだろうか。
今度は、こちらが気になる。
ほっとした私の顔を見ながら、
丸顔の紳士は続ける。
良いニュースとは、今回のラジオの交換費用一切を、
メーカーが肩代わりするといってきていることです。
駄目元でメーカー側にリクエストを出したのですが、
先方から承諾の連絡が入りました。
おお、なんと。
そりゃあそうだろう。
よくよく考えれば、新車時代からもラジオの電源には問題があり、
近所の整備工場で見てもらったことさえあったが、
当時は、特に問題なしで、片付けられていた。
丸顔の紳士は、うれしそうに、さも自分の手柄の様に話を続ける。
いや、全く彼のお陰なのであろう。
この寒空に、汗が出るほど全速力で走ったことなど、気にならず、
一言電話連絡が欲しかったなどと、思いもせず、
感謝しつつ、今朝渡した鍵を返してもらう。
すっかり丸顔の紳士のペースとなってしまったが、
悪い気はしない。
こうして、ラジオもCDも使えない、
無音の世界の中で、
エンジン音にのみ神経を集中させアクセルを踏む。
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