「明日は第二ヴァイオリンになったからと伝えておいて。」
夜中のSMS。末娘バッタへのメッセージ。これまで第二ヴァイオリンとして練習をしてきたが、土曜の段階で第一ヴァイオリンだと言われ、週末に必死に練習し、月曜もダンスの練習の後へとへとなりながらも、練習していた彼女のことを思う。ちょっと待ってよ。そうならそうと、何故夕方の段階で教えてくれなかったのか。一体どう言えばいいのか。翌朝は6時半に出発するというので、6時起床。
ヴァイオリンのクラスに、バカロレアでオプションに音楽を選ぶ仲間がいて、彼女がRameauのガボットを弾くというので、末娘バッタが応援隊として選ばれていた。他にも別の高校生が応援隊にいたが、自分たちの試験と重なり突然参加ができなくなっていた。そこで助っ人が登場。二年前にバカロレアを取得している先輩仲間。末娘バッタが唯一ダンスの練習の為に参加できなかった最終調整の場で、彼女が第一ヴァイオリンで加勢することになったらしい。
まあ、いわば応援隊。だから、メインの彼女にとってベストであれば、それにこしたことはない。そう末娘バッタに諭すか。
朝の6時に、末娘バッタを起こしながら、そっと囁く。今日は第二ヴァイオリンをお願いするって、と。すると、眠気眼で返事が返ってくる。「そんなことになると思っていたよ。」と。そして「でも、第二ヴァイオリンのパート、全然練習していないよ。」
思ってもみなかった意外な反応。気にしていない筈はない。
それなのに、このしなやかさ。
午前10時頃にSMSが届く。
「素晴らしかったよ。音が響きあって最高だった。」
慌ててヴァイオリンの師、マリにその旨SMSを送る。
すぐに返事が返ってくる。
「子供たちの素晴らしさに感動して泣いたわ。彼らのこと、とっても誇りに思う。」
そう、末娘バッタが傷つかないかと心配してくれていたマリ。でも、そんな心配を吹き飛ばすような明るさで、最高の演奏をしたと感激のメッセージを送った末娘バッタ。私の方こそ泣きそうになる。
夜8時。外は未だ昼間の明るさ。一緒に庭に出てさくらんぼを摘む。末娘バッタがぽろりとこぼす。「多分、去年だったらショックだったと思う。でも、今日はそんな風には感じなかったよ。だって、あの演奏はバックを受ける彼女のためなのだもの。彼女のために皆で演奏しなきゃって思ったよ。そして、本当に素晴らしい演奏ができたんだよ。」
さくらんぼのような唇で楽しそうに話してくれる。いつまでも続く彼女のおしゃべりは、さくらんぼを狙って姦しい鳥たちの賑やかな歌い声と一緒に青空に吸い込まれていく。
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