「ママ、今からお刺身を届けるから。」
えっと。いいけれど。
今日からパリで一週間の企業研修をしている末娘バッタ。明日からはレストランだが、今日は魚屋さんでの研修。どうやら初日は大先輩方から優しくしてもらえて、楽しい日を過ごした模様。ちゃんと間違えずに一人で待ち合わせの場所に行って、挨拶をし、無事に一日を終え、満足したのだろう。
会社のドアを開けて、こそっと入ってくる。入ってくるなり、ハグにビズ。
あらあら。昨日、出て行ったばかりじゃない。
綺麗にカレイのお刺身が二皿、卸山葵までついている。
「縁側の骨を外すのが難しかったんだよ。ほら、ここをきゅっとするように、並べたんだよ。」
興奮しながら報告してくれる。
パパのところで一週間お世話になるのだから、パパ達にお土産に持っていけばいいのに。
「せっかく作ったんだから、ちゃんと分かって大切に味わってくれる人じゃないと嫌なの。」
お刺身のお皿の下にも、何やらラップに巻かれたお皿がある。鯖を三枚に卸したという。カレイは生きている魚を活け締めしたけれど、鯖は既に死んでいたから、新鮮でもお刺身は駄目だと言う。あらあら。どこのお店でも、活け締めした魚を使っているわけではないのよ、と思う。それに、鯖は酢で締めて、しめ鯖が美味しいのではないか、と思うが、そうか、そうか、と聞いておく。どうやら、味噌煮を薦められたらしい。
我が家への帰り道、末娘バッタのお土産をぶら下げながら、これが彼女にとって初めての労働の成果物であることに思い至る。
急いで、こっそりとわざわざオフィスにまで寄ってくれて、母親に届けたかった彼女の思いに、胸が張り裂けんばかりになる。
ありがとう。大切にいただくね。
家路を急ぐ。
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皆さんからのコメント楽しみにしています
可愛いですね。一番はお母さま 涙が出てきそう。末娘さんの研修はお料理関係なのでしょうか。なんだかとっても素敵ですね。生きた鰈を裁くなんて凄いです。長女の時には研修はなく次女はファーマシーでの一週間の研修でした。バッタさんたちみな個性的各自の道を開発のようお母さまの愛情に包まれての環境だと思います。
返信削除お母さま万歳。。。
Fleur de selさん、今日は。コメントありがとうございます。
返信削除日本文化に憧れが強い末娘バッタ。日本の料亭での研修を希望し、願い叶って5日間お世話になりました。とっても皆さんに良くしていただき、本当に感謝しています。
長女はジャーナリストに憧れていたので、メディア関係の会社で研修。その後、医者の道も考え、クリニックで研修。医者と看護婦間の明らかな立場の格差に愕然とし(と本人は言っていましたが、恐らく勉強の大変さが一番の理由だと思います)、その後別の道を選択しています。息子バッタは、気象関係の研究所にお世話になりました。同じように育てているのですが、三者三様。面白いものですよね。
お褒めのお言葉ありがとうございます。素直に嬉しいです。そして父親の愛情も大いに受けていること、母親の私が認めています。家庭環境は一般的ではないですが、胸を張って子供達にそれだけは言えそうです。