遅い3月の雪もすぐに融け、そろそろ土に同化しそうな湿った枯葉の隙間から緑が見え隠れしている。雪にすっぽり埋まって瞬間冷凍しただろうクロッカスたちは、のんびりと自然解凍し、当たり前のように鮮やかな黄色い花を青空に向かって開いている。花壇ではヒヤシンスやチューリップはおっかなびっくり緑の葉を伸ばし始めている。
庭の奥で色合いの違う輝きが気になって、キッチンの戸から外に出て見ると、やわらかな風に迎えられ、一瞬立ち止まる。ゆったりと庭の奥に足を運べば、そこで小さな水仙の精に出会う。
もとの家主が愛情をこめて作った庭には、春にはクロッカス、ヒヤシンス、チューリップ、水仙が咲き乱れ、リラが咲き誇り、さくらんぼ、クエッチ、ミラベル、梨、林檎の花が満開となり、メーデーの頃には鈴蘭が可憐な花をつけ、藤の花が甘く香り立ち、菖蒲が咲き、さくらんぼが実をつけ、初夏には薔薇があちこちで香気を放ち、牡丹、芍薬が華やかに咲き、レインクロードがたわわになり、真夏には紫陽花や葵が鮮やかに咲き、山吹色の枇杷が実り、夏の終わりには黄金の粒ミラベル、そして、紫色のクエッチが熟れ始める。
この庭では、確か水仙は垣根沿いに揃って並んでいたはず。そして、かなり立派な葉と茎をもち、しっかりとした花をつける。ところがどうだろう。この裏庭の水仙は、手のひらに入ってしまいそうな可憐さ。
あやふやな記憶をたどる。
いつもこの裏庭には小さな水仙が咲き乱れているのだろうか。そして、この一株だけが今年は咲いているのだろうか。或いは、この一株だけ、どこからか飛んできた種から芽を出し、今年初めて花をつけたのか。
確か垣根沿いの水仙は、未だ蕾さえもつけていない。
春の訪れを知らせに来てくれたのか。
春の陽射しを浴び、黄色い花びらが一層色を濃くする。
春来たりなむ
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