2018年4月10日火曜日

ジュダの樹






「私、とっても心配なんだけど。」
数年前に80歳の誕生日を迎えてなお矍鑠としたご近所のマダムが、停車した車から降りようとするのも待ちきれないかのように声を掛けてきた。

何事かと思って話を聞くと、我が家の庭の大きなジュダの樹が枯れてしまったのではないかと心配しているとのこと。仰ぎ見ると、確かに沢山の枝には枯れた鞘がぶら下がっていて、寒々としている。毎年赤紫色の粒粒の花が見事なのに、枯れてしまったのなら、これ程残念なことはない。そう、辛そうな表情で話している。

なんだか、デジャビュ。そう、昨年も同じ会話をしたのではあるまいか。いや、毎年と言っていい程、同じ会話をしている。

毎年、この木は枯れたように見えるが、梅も桜も散った頃、突如と細い枝にびっしりと赤紫の小さな花をつける。今だって良く見れば、枯れたように見える枝から、僅かな硬い膨らみが確認できる。


 

今、森に足を踏み入れると、それぞれの木の芽吹き方の違いに驚いてしまう。あっという間に大きな緑の葉を広げてしまうもの、いつまでたっても硬い芽を保っているもの、先ずは花が咲き誇るもの。同じ種類の木にしても、通りでは桜が咲いているのに、我が家の庭のさくらんぼやミラベルは未だ蕾のまま枝を風に揺らせている。クエッチの木など今年は花が咲くのか怪しい程に蕾が育っていない。ところが、4月の終わりに咲くリラは既に枝にたくさんの蕾をつけ始めている。


 


人間も同じなんだろう。
それぞれ個性があり、目覚めの時期も成長の時期も各人異なる。



  



日曜だけ帰って来た息子バッタが、寮に帰る前にバイオリンを弾き始める。
バッハ。二つのバイオリンのための協奏曲、ニ短調第3楽章。
レッスンがあるわけでもなく、コンサートを控えているわけでもない。純粋に自分のために弾いている。

懐かしい音色。
宇宙に思いを馳せる。






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