ママ、息を深く吸い込んで。
ほら、ここに、そう、ちょうど胸の真ん中あたりに、ぽっかりと場所を作ってあげるように。
ね。そうすると、リラックするよ。
長女バッタの目をまじまじと見つめる。
かなり人間関係的にややこしい夜の会議に出かけようとしていた時のこと。
まだまだ子供だと思っていて、
どんなに年を重ねても、どんなことがあっても、
私の子供には変わらない長女バッタから、
リラックスをする方法を教えてもらう日が来るとは思いもしなかった。
いや、そんな日が、こう早くくるとは思いもよらなかった。
いらいらしているように見えたのか。
或いは、緊張が伝わったのか。
それより、いつ、誰に、この方法を教えてもらったのだろう。
彼女がしてみせてくれたように、
ゆっくりと深呼吸をして、
胸の間に、ぽっかりと空間を作る。
余裕、という空間を。
そうして、その晩は出掛けていった。
先週の金曜も、
陸上仲間に、そのリラックス法を披露していたから、
彼女達から仕入れたものではなさそう。
私の知らない世界で、大人になっていく長女バッタ。
先週末に、あんなことがあり、
様々な思いに耽りながら、雨戸を閉めようとバッタ達の乱雑な部屋に入ると、
いかにも、読んで頂戴、と自己主張している格好のノートが床に転がっている。
最近、末娘バッタと長女バッタが交換日記をしていると、
息子バッタが言っていたが、このことか。
開いてあったページには、一面に何かの木の枝のデッサンがされてあり、その隙間にびっちりと文字が埋まっている。
この枝は何でしょう、で始まり、続く文字を読み、驚きで目が飛び出る。
なんと、「ストレスを感じる」といったフランス語の文章が、何度も、何度も書き連ねられている。多分、日本語で書くとしたら、「ああ、いらいら。いらいら。」となるか。
土曜の英語のテストのこと?
それとも、バイオリンの教本5冊目終了試験のこと?
或いは、中学卒業資格試験のこと?
はたまた、初めての一週間の企業研修のこと?
確かに、彼女の生活は、充実している、といえば充実しているが、
忙しない、といえば忙しなく、
そして、
緊張を強いられ、成果を求められる生活、かもしれない。
そうか。
長女バッタが教えてくれたように、
深呼吸をしてみる。
胸の真ん中に、ぽっかりと空間を作ってあげる。
ちょっと、気持ちに余裕が生まれたかな。
今夜にも、長女バッタに伝えよう。
このリラックスの方法、悪くないね、と。
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