「午後にご自宅に伺ってもいいですか。」
翌日に工事業者との約束があったため、てっきりそのことかと思い、明日じゃないと困るわと言いかけ、もう一度聞き返す。
なんとお花屋さん。お花?私に?誰から?
「メッセージがあるので、その時のお楽しみにとっておくのはどうでしょう。」
花屋のお兄さんが思わせぶりに提案する。
すぐに、ある一人の顔が浮かび、それから、もしかしたらと、もう一人の顔が浮かぶ。恐らく、と思いつつも、ひょっとしたら、と心は揺れる。
もったいぶったわけではないが、何かと寄り道をする用事があり、帰宅したのは遅くなって。
玄関には、果たして、純白の胡蝶蘭。
気品ある貴婦人のような豪華さに、ちょっと気後れしてしまう。
そう、胡蝶蘭は素晴らしい。されど、隠れた思いを運ぶ花ではない。フォーマルで、恭しい。
メッセージカードを見て、意外に思う。
英文で「君はとっても大切な人」、そう記してある。フランス人が、英文でメッセージ。照れ隠し以外の何物でもないではないか。
こうして、いつもの思い込みの激しさに拍車がかかる。
お礼のメッセージをSMSで送ると、翌日、二年前に着信メッセージ音を指定したサイコロが転がるような音がして、もっと頻繁に君には花を贈らなきゃ、と返事。
この頃元気がなくて、かつてない程悲観的だというので、元気になるようにベルガモット、ジンジャー、胡椒、オレンジのピール、シナモン、蜂蜜、アーモンド、クランベリーが入った特別なケーキを焼いて、庭の水仙の花と一緒に届けていた。だから、「Happyな気持ちになってくれたらHappy」、とSMS。
その夜、メールが入る。確かに数週間前までは悲観的だったけど、この間のアジア出張で気分転換ができたよ。家族が意見を変えてくれて、北欧への移住も来年には実現しそうだ。それで、君の方はどうなんだい。すぐにも会っていろんな話をしないとね。君はいつだって自分のことになると無口になるから。
純白な胡蝶蘭。
外は眩しいほどの真っ白な梅。
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