テロ事件の影響に違いなく、ちょっとした不審物があると電車が止まってしまう。特定区間で一時運行を停止することが頻繁に見られ、また何故か最近信号トラブルによる区間の運行停止がこのところ多い。前回の連続テロ事件の主犯が次のターゲットにしていた場所を通るからだろうか。私の通勤路線が影響を大いに被っている。
仕方がないので、パリ郊外環状線を使ってみることにする。回り道となるが、取り敢えずは電車が動いていることを頼りに、こんな田舎路線で途中下車となれば無人駅でタクシーもいないことが頭を掠めるが、乗り込む。終着駅で乗り換えることになっていた。
驚くほど清潔な車両は仕事が出来る程の明るさで快適。4人乗りの各コンパートメントに一人使用が目立つ。駅に停まる度に、誰かが降りる。駅名を確認しながら、車で通りこそすれ、駅の存在すら知らなかったことに驚いてしまう。
ほどなく着いた終着駅は煌々と森の暗闇を満月が照らしており、ひっそりとしていた。ばらばらと降りた人は家路を急ぐのか、もう姿が見当たらない。心もとなくなる。プラットホームはここしかない。では、反対側に電車が来るのか。一人佇んでいると電車から運転手らしき男性が降りてくる。声を掛けると意外な答えが返ってくる。
電車は、駅に行かねば乗れない、と。
では、ここは駅ではないのか。
示された方向に歩いて行くと小高い丘に確かに路線橋らしきものが白い蛍光灯の光の下で光っている。では、あれは車両の屋外パーキングだったのか。何のアナウンスもなく、しかも暗闇が多くを占める中で、何も知らない人は迷うであろうと他人事のように思う。
窓だけが昼間の光をたたえて電車が静かにプラットホームに入ってくる。
夜汽車の人となる。
別世界に誘われ、迂回した疲れは忘れ去られ、旅への高揚感が胸を満たす。
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