「ふうん。それで、パパの機嫌は良くなかったの?」
「ちょっとね。でも、大丈夫。だって今週バカンスに行くんだもん。」
「ああ、そうね。でも、仕事でしょ。」
「ううん。アンヌも一緒だよ。」
ママの表情を読み取ったのか、息子バッタが強張る。
一体、どうなっているのか。部下の仕事を横取りして、今週、長女バッタの留学先に父親が行くことは知っていた。全く彼らしい立ち回りの良さ。父親だし、上手く仕事で行けるなら、その合間に娘に会うぐらい当然であろう。ところが、だ。パートナーの女性も一緒とは。
「ちょっと待ってよ。」声が大きくなってしまう。
「ママは聞いていない。」
でもね、
「世の中、全てのことを知らなくてもいいの。
そして、全部ママに教えなくてもいいのよ。」
そういう親に、どう対応して良いのか分からないバッタ達。
そもそも、週末の話からおかしかった。末娘バッタの企業研修の話を、パパのところの招待客にケチつけられたとかで、末娘バッタがくさっていた。そんなことにケチつけたのは、誰よ、との話になれば、アンヌの父親の新しい奥さんだ、という。それで、話を聞いてみると、日曜のランチにアンヌの両親たちが揃ってバッタ達の誕生祝いをしてくれたと言うではないか。
バッタ達二人の誕生日。それをパパのところで祝う。それは、それで有難いことだし、感謝すべきこと。でも、パートナーの女性の両親を招待しての誕生パーティー。何かおかしくないか。
「ママ、この話をしても、誰も幸せにならないの。だから、この話はやめよう。」末娘バッタが言う。
「だって、変じゃない。なんで、あなた達の誕生パーティーに、アンヌの両親が呼ばれるの?」
そんな話をしていた矢先のこと。
勿論、アンヌにしたら、彼が海外出張に行くので、せっかくだから一緒にバカンス、なんだろう。しかし、何故に、留学している娘のところに、二人で雁首揃えて行くのか。
丁度一週間前、留学してから初めてスカイプをした時、「ママ、ノエルはどうするの?良かったら、来ない?」そう言った長女バッタの声が今になって鮮明に耳にこだまする。
泣かないって約束したのに、ママは泣いている。
夜空には静かな風。
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皆さんからのコメント楽しみにしています
ママ、泣いていいよ。それが普通なんだよ。
返信削除でも哀しきかな、バッタもMuffinも変則的な家族というものに慣れっこになって、
ママやパパやパパのパートナーの間で波風立てず立ち回る術が身についちゃってて他のやり方がわかんない。
パパはもう変わらないけど、バッタたちが誰かと幸せになろうとする時になったら、
ママの気持ちとか家族を築き上げることに別の角度から考えるようになると思うよ。
ママが愛してくれることが支えになる。
Muffinちゃん、ありがとう。
返信削除16の貴女が、そんな思いを心に秘めていたなど想像もつかなかったあの頃。もしかしたらA君は気がついていたのかな。腕を掴まれ、ひしっと見つめられ、「僕たちはMuffinを幸せにしなくっちゃ。」と言われたことを思い出したわ。
バッタ達の立場からのMuffinちゃんの言葉、胸に染みます。そうね。私もバッタ達の立場になって考えなきゃ。親と言っても所詮人間。自分の思いだけで手一杯。子供達にとっては今あることが現実で、それを受け入れることが自然なのよね。
まだ、バッタ達はママに泣いていいよ、なんて言わない。ママは泣かないことになっている。バッタ達がもうちょっと大人になって、家族を持つようになってからかな。Muffinちゃんの言う通り、家族を築き上げる時に、ね。
ふふふ。なんだかA君、懐かしいね。Muffinちゃんの赤い皮のサンダル、目に焼き付いているよ。
A君の行方、何気にわかった。(笑) HK。
返信削除A君、今頃くしゃみしているかな。今頃私たちに噂されているなんて、思いもしないよね。むふふ。
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