ちょっとした身勝手な贈り物だったのに、翌日、そのお返しを頂いてしまう。
緑が基調の包装がトレードマーク。一度、日本にお土産を選んでいる母に奨めたが、バッタ達の父親と同じ名前とかで、変に未練があるように思われるのも癪だからと、正直分かるようで分からない理由で購入していなかった。フランスでは良くある名前だし、だからこそ、大抵姓名一緒のパッケージで一人の名前として扱われることから、大して気にする必要もない。しかし、そう言われたら、却って、こちらも買うのもおかしく、それ以来、お店に立ち寄ってもいなかった。
緑の細長い箱に黒い帯。何とも言えない高級感。しかも、帯の接着部分が分からない繊細さ。中には、大きさや形、色が異なる4種類が、ぴしっと行儀よく並んでいる。
宝石のような緑の楕円の粒を口にすると、先ずは舌の上でとろけ出す柔らかさに驚いてしまう。そして爽やかなヴェルヴェンヌとライムの香りが口中に広がる。この柑橘系とキャラメルのような味わいという、思いがけない出会いに驚きとともに感動。フランス随一のチョコレートと言われるだけのことはあるか。
ふと手にしたカタログに挟まれていたカードは、ロダンの白い大理石の『接吻』。
『L’art c’est encore le goût.』
芸術(彫刻)の趣をチョコレートの味に掛けるなんて、すごいセンス。
でも、この作品。キスの味が伝わってきそうな濃厚さ。シェフの天才的な感性に感服。
初めてフランスを訪れた年。もう二十年以上も前のこと。カミーユクローデルの映画を観に行き、魂が揺さぶられる思いをしたことを思い出す。フランス語でどこまで分かったのか、分からなかったのか。情けない男、ロダン。天才的な、しかしあくまで女でしかなかったカミーユ。そして精神的に病んでしまう辛い最期。
その後、ロダン美術館を訪れ、カミーユの作品が展示されていることに驚きを禁じ得なかった。いや、その記憶もあてにならないか。父親の職場が近いこともあって、バッタ達を連れて行ったことがあるが、未だ幼くて、それこそ彼らの記憶には残っていまい。
この天才シェフに誘われて、チョコの彫像を見にロダン美術館にバッタ達を連れて行ってみようか。
また別の味わいを持って楽しめるかもしれない。
L’art c’est encore le goût.
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