「ママ、明日はブルベの試験の日なんだよ。すっごいストレスなんだから、もうそうやって怒るのやめてあげてよ。」
帰宅するなり、くどくどと末娘バッタに対して、土曜のサッカーの試合の出欠確認の連絡をしていないことを怒っていた私に、息子バッタが一喝する。
ブルベの試験?
末娘バッタは真っ赤な顔で嗚咽しながら、「ごめんなさい。ちゃんと連絡を入れるから」と謝っている。
彼女の中学卒業検定試験であるブルベが明日であることなど、ちっとも頭になかった。
カレンダーには何の印もついていない。
そうか。それなのに、いつも通りに9時過ぎの帰宅。末娘バッタが夕食を作ってくれていた。鶏の胸肉は火が強かったのか焦げていて、トマトときゅうりのサラダは味噌の塊が残っているし、梨は皮付きのまま角切り。それに対して、一つ一つ厳しいコメントをしていた。
母親失格、か。
怒っていたエネルギーのやり場に困って、それじゃあ、ママが皆悪いみたいね、と言うと、息子バッタは、そんなんじゃないよ、兎に角そうやって怒り続けるのはやめてよ、何にもならないじゃない、と。
ふっと怒りの気が消える。
母親として初めて息子に一喝されたか。
いや、確かに、ご尤も。
皮付き梨を口にすると、やっぱり皮が邪魔。それでも、実はとろけるように甘い。
「美味しい梨じゃない。」そう言うと、末娘バッタが微笑む。
「やっぱり皮が邪魔だけど、ね。」 末娘バッタの笑顔は大きくなる。
ありがとう、息子殿。
開け放たれた窓から新緑の香り。
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