日中の暑さをどうしても取り込む二階の寝室の窓を全開にし、一回のコンピューター室で一人PCに向かっていた夜。
パパに呼ばれたからと息子バッタはパリ。
暑いからか、その気にならないからか、ヨーグルトのみの夕食を終え、真っ暗な我が家の中で明かりがある部屋は、私のいるコンピューター室。
近所は未だバカンスから帰っていないのか、夜は静けさをしょって這い寄ってくる。
と、ばさばさばさ。何だか聞き覚えのある音がしたかと思うと、黒い影がさぁーっとコンピューター室に入ってくる。
行き場を失って、気が狂ったかのように、ばさばさと音を立てながら、その黒い影は天井を旋回し、急降下をしたかと思うと、急上昇をし、次の行動がつかめない。
血の気がなくなる。
まさか。
どうしてだろう。
もう7年以上も前になろうか。あの日も暑い日で、窓を開けていた。
寝室で本を読んでいたところ、ランプに羽虫にしては音が大きい物体がぶつかってくる。
鳥かしら。
訝し気に目をやり、声こそ出なかったが、飛び上がってしまう。
蝙蝠。
動物園で見たことのある、洞窟にいる、おなじみの蝙蝠。
蝙蝠君には悪いが、ドラキュラの仲間であり、悪者の使者とのイメージしかない。
幼い時に見たテレビ番組、アニメのバットマンの主題歌の終わりに、「蝙蝠だけは知っている。ワッハハハハァー!」という箇所があった。喜んで歌っていたが、正直怖かった。
本当に苦手。
それなのに、寝室に訪れるなんて。
あの時は、蝙蝠がぽたりと床にへばってしまい、その上にプラスチックの箱をのせ、うまく引きずって蓋をし、外に逃がしてやった。
見まいと思いながらも確認した蝙蝠の顔。
人間の顔をしていて、本当に怖かった。
それがどうして、また訪れたのか。
独りだから、心配してくれたのか。
暑くて調子が狂って、煙突から降りてきたのだろうか。それとも、全開していた寝室の窓からか。
今回の蝙蝠は床にぽとりと落ちる様子もなく、飛び交うばかりなので、取り敢えずは一人で部屋にいてもらうことにする。
暑いだけでもうんざりなのに、夜を蝙蝠捕獲に使いたくはない。
ああ、蝙蝠君よ。
私は独りで大丈夫だから。安心してね。
明日には窓を開けておくから。
ひっそりと飛び交う音がやんだコンピューター室のドアに向かって呟く。
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