日本の幼少教育では身近な植物の生育を楽しむ心を育むという目標があるのだろう。同時に、植物の生育の様子を観察することで、自然界への理解、探求心、向学心をも育むといった壮大な目標もあるに違いない。
幼稚園では朝顔、小学校低学年では向日葵、ヒヤシンスの水栽培、中学年ではジャガイモ、高学年では大豆が定番のように思われる。
中学時代、こっそりと自分の部屋に大蒜の水栽培をして楽しんでいた時があった。真冬の時期で、濃厚な緑の葉がぐんぐんと伸びていく様は非常に印象的であった。
もっと幼い記憶をたどると、母がサルビアやトウモロコシを植えていたことが甦る。今でも真っ赤なサルビアの花を見ると、胸がなんだか苦しくなるぐらい切ない。
仕事で忙しい母が、サルビアを植え、トウモロコシの苗を植え、肥料を上げていた姿。その周りを嬉しそうに走り回る子供達三人とコリー犬のビック。このビックは母にだけ懐いていた気がする。そして、いつだって、どこかに逃走しようと狙っていた。一度は何十キロも離れた村で見つかった。幼稚園生の頃だったと思う。自分より体の大きなビック。ビクトリアからきていると聞いていたが、そうか、Victoriaが本名だったのか。オスだったのにな、と、ちょっと不思議な思いになる。となると、ビクターが本名だろうか。幼い記憶はあやうい。
土いじりのイメージは一切ない父だが、アボガドの種を楊枝で支え、水栽培を楽しんでいた姿が甦る。パイナップルの水栽培もしていた、と、思う。
その記憶によるものか、或いはヒトとしてのDNAのなさる業なのか、異国の地で育った植物を育てたい思いに駆られる時がある。
あまりに新鮮でおいしいパイナップル。象牙海岸からの極上のマンゴ。ブラジルの地で食べたカシュナッツ。そして、フィリピンの爽やかな柑橘カラマンシー。
パイナップルは背丈が1mにもなったろうか。硬く鋭い濃厚な緑の葉を元気いっぱいに広げて育っている。マンゴは既に何度も挑戦しては、枯らしてしまっている。今あるものは、今年の夏のマンゴ。カシュナッツは芽を出したが、その後が灼熱の太陽が続かずに育たなかった。カラマンシーはゆっくりと芽を出しているが、カシュナッツと同じ運命をたどらないかと心配している。もう一つ、フィリピンからのマンゴ。これは芽を出しそうに土が膨らんでいるが、そこからの動きがない。
いずれガラス張りの植物園のような家に住んでもいいかな、と思う。
いや、いっそのこと、パイナップルやマンゴが育つ気候の土地に住めばいいのだろう。
椰子のジャングル。
その時には、柿が懐かしく、種を植えるのだろうか。
どうやら、海の藻屑にも、宇宙の星屑にも、そうすぐにはなれそうにない。
カラマンシーが育つまでは。
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