情けない話だが、長女バッタが家を出て行ってしまってからの喪失感からまだ抜け切れていない。ふとした時に、彼女の不在を大きく感じる。来年の夏には息子バッタがいなくなり、その二年後には末娘バッタがいなくなる。果たして、耐えられるのだろうか。
サッカーの練習から帰ってきて、シャワーを浴び、未だ水が頭から垂れている状態で、洋服を買って欲しいから、今からパリに連れて行ってくれと言う息子バッタ。デファンスのショッピングセンターは夜の8時には閉まってしまう。残り時間1時間。
高速を使えば、ものの15分で着いてしまうだろう。彼が行きたいお店は二つ。何を買いたいかまで分かっている。サイズさえ合えば、すぐに買えてしまう。
そうして、本当に30分後にはお店のレジで支払いをしていた。何着も試着をし、似合っていると思うのに、滅多に首を縦に振らず、こちらがうんざりするまで拘っていた長女バッタとは大違い。それでも、彼女のコートを手に、鞄を持ってあげて付き合った当時が懐かしいと思えてしまうのだから、不思議なもの。
今頃寒くて暖かいコートが欲しくなっているのではないか。薄手のダウンを買って送ってあげようか。
いつの頃か、ママが買う洋服には袖も通さないことが分かり、決して本人がいない限り洋服は買わないことにしていた。
「ママは買わないの?」息子バッタが薄手のダウンを手にして言う。
現実に戻る。ん?ママ?
「ママ、いつもコンピュータールームでオーバー着ているじゃない。このダウンなんか、ぴったりだと思うよ。」
かくして、予定もしていなかったダウンを買ってしまう。末娘バッタにあげてもいいかな、と思いつつ。
しかし、それでは意味がないか。息子バッタからのメッセージを大切にしなくては。ママも自分のための人生を生きてね、という。
帰り道、車内にジャズが静かに流れる中、フロントガラスを通して、大きな三日月が夜空にくっきりと浮かんでいる。
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