ネコヤナギが好きだった。あのビロードの艶やかな房が、なんの変哲もない枝からにょきりと出てくることが、摩訶不思議でならなかった。以前、道路の脇のあぜ道で、自由気ままに咲き誇っているネコヤナギの枝を失敬してきたことがある。庭の片隅に植えてみたが、残念なことに根付かなかった。
あれから、何度も同じ場所に行くのだが、刈り取られてしまったのか、ネコヤナギの姿を見かけることはなかった。
それが先日、長女バッタとトンカと午後の散歩を楽しんでいた際、小川のほとりに、それらしき枝を発見した。枝には幾つも、尖った芽の先が見え隠れし、銀色に輝いていた。ネコヤナギの季節にしては、ちょっと遅すぎはしないかと思ったが、今年は急に寒くなったり、暖かくなったり、そうかと思うと、また寒さがぶり返したりと、季節感が分かりにくい日々が続いていた。出遅れた枝があっても、いいではないか。
これから化けるぞとの生命感にあふれる枝を、申し訳ない、失敬しますよ、と手折る。トンカが眩しそうに見上げている。ふふふ。大切に持ち帰って、瓶に差して置いた。
毎日、膨らみの変化を楽しみながら、水を変えていたのだが、奇しくも長女バッタがフィレンツェに旅立つ朝、芽がぱっと出ていた。それはネコヤナギの房などではなく、黄緑色のやわらかな葉となるようだった。拍子抜けはしたが、却って愛おしく思われたことも事実。
長女バッタの旅立ちの日ということも、いいではないか。生命力あふれる、逞しい、その身体で、新たな挑戦に一人旅立っていく貴女。皆の期待なんか、かっ飛ばすぐらいの勢いで、大いに化けておくれ!
いってらっしゃい
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