2022年1月12日水曜日

あの時

 





あの時、相談を持ち掛けてきた女性の友人のことを本気で心配し、心から応援し、時間を作って話を聞いて、専門家を紹介し、出来る限りのことをした。必要あらば書類を作成し、彼女の利になるように証言する文書をしたため、居住証明に署名した。


彼女を庇うこと、支援することに必死だった。だから、彼女の不用意な行動が全く関係のない第三者の別の友人に迷惑をかけてしまったことに対して、無頓着ではなかったにしろ、あまり気にしないで放置してしまっていた。


その第三者の友人は、全く潔白であるにも関わらず、よからぬ嫌疑をかけられ、変な噂を立てられてしまっていた。何人かには、それは全くの間違いで、事実無根であることを伝えはしたが、馬鹿な噂というものは、卑劣であればある程皆喜ぶらしく、もっともらしくあっという間に広がっていて、どこでどう火消しをしようにも、収まる様子はなかった。唯一の救いと言えば、当の本人が一向に気にしていなさそうなことだった。


同時に、あの時、私自身が突如思いもよらぬ落とし穴に入り込んでしまったので、自分自身のことだけで精一杯となり、外の世界との繋がりを遮断し、ひっそりと全ての扉を閉めてしまったので、友人たちのその後について何も知らず、友人達とも会うこともなくなってしまっていた。


もう7年以上も前になるのだろうか。


久しぶりに、本当に久しぶりに、第三者の潔白であった友人の細君と年始の挨拶をメールで交わした。するとどうだろう。彼はここ数年鬱でやる気のない状態が続いていると知らせてくれた。金槌で頭をかち割られたような衝撃を受ける。


私が知っている彼は、陽気で、ユーモアがあって、おどけていて、仲間の人気者だった。鬱なんて言葉は彼には似つかわしくない。一体、何だってそんなことになってしまったのだろう。


あの時、もう少し私自身に余裕があれば、もう少し、彼のことを思いやる心の余裕があれば。そう悔やまれて仕方がない。


ヴァンセンヌの森で屋外コンサートを一緒に聴いたこと、満天の星空の下でBBQを楽しんだこと、毎週一緒に勉強会をしたこと、夏の暑い日の夜、パリのビストロで食事をしたこと、彼の会社の冴えなそうな同僚を紹介され、その彼から変にアタックされて辟易したこと。色々なことが走馬灯のように思い出される。彼が鬱になるなんて信じられない。


森の散歩に誘ってみようか。そうだ、そうしよう。靴はぬかるみだらけでドロドロになるけれど、頭の中はテトリスのように、思い煩っていたことが、ストン、ストンと綺麗に片付いてしまう。彼の春の陽だまりのような笑顔が懐かしく、おぼろげに脳裏をよぎる。


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2022年1月9日日曜日

魔法の粉~ラスエルハヌート

 






香辛料の力は偉大だと改めて思ってしまう。このノエルに長女バッタが4つの香辛料の瓶を贈ってくれた。山の七味唐辛子、旅のスパイス、ボンベイのカレー粉、ラスエルハヌート。店主が、世界中を旅し、自分の目と鼻と舌で吟味、厳選したスパイスを調合した、いわば魔法の粉。貴重な品とはいえ、香辛料の命は短い。新鮮で、色も香りも鮮やかなうちに、大切に使い切ってしまいたい。そこで、この4つの瓶を料理の度に惜しみなく使っている。奥行きのある香りが、料理の素材の味を引き立ててくれる。


今回はラスエルハヌートの魔法の粉の出番。


一晩漬けて戻しておいたひよこ豆を砕き、みじん切りにしたパセリとイタリアンパセリを混ぜ、エシャロットと生姜のみじん切りを加え、小麦粉をさっと混ぜ、塩、胡椒、そしてラスエルハヌートを振りかけ味をつける。丸めて団子状にし、チアシード、白ごま、黒ゴマなどで回りをコーティング。何もつけないナチュラル版も用意しておく。


クッキングシートの上にやさしく並べ、オリーブオイルを少しずつ垂らす。そして、オーブンでこんがりと焼き上げる。フライパンで焼いたり、揚げても良いのだろうけど、鮮やかな色を残すことを主眼に、あえてオーブンで焼く。


こんがりと焼き上がった香ばしい匂いがキッチンから溢れてくれば、呼ばなくとも皆がやがやとキッチンに集まり、食卓の準備を手伝ってくれる。さあ、熱々をいただこう。



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2022年1月7日金曜日

小糠雨

 




君からパリをとったら、何が残るだろう。


そんな趣旨のメールが大学の大先輩から届いた。自分自身にパリがあったのか、とむしろ驚き、考えてしまった。三つ子の魂百までではないが、みちのくの山間の農村こそが私の原点であり、そこから背伸びをして色んなことに挑戦しているといった風に自分自身を捉えていた。


一方、私から子供をとったら、残るのは空虚か。


土地よりも人間との繋がりが私を私たらしめているのではないか。最近は、男は、とか、女は、とか言うと、ジェンダー問題を何だと思っているのだと反発を食らうのだろうが、それを敢えて承知で言えば、男は土地との繋がり、女は人との繋がりを強く求めるのではないだろうか、と思う。異国の地で踏ん張る女性を多く見て来たからだろうか。


恐らく、大先輩が私を通してパリと繋がっている、そんな風に思っていたしたのだろう。私からパリを取った時、それでも人間としての魅力を感じていただけるよう、精進しよう。


天窓が優しい音を立て始めた。外は小糠雨か。



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2022年1月6日木曜日

ロマンのかけら

 





鼻先を冷たくしながら、街灯もまばらな裏道を買い物袋を提げて歩いていると、ニカニカ、ニカニカ笑い声が聞こえてくる。頭上を見れば、三日月。その三日月を吊っているかの如く、大きく輝く惑星が一つ。木星。


なんだか懐かしい思いがふっと胸に過る。


するとどうだろう。

なんと日本にいる高校時代の友人が、同じ画像をFBの記事に上げているではないか。仕事帰りに出会った風景とコメントしてある。


日本とフランス、時差もあるし、まさかねえとは思うものの、時空を超えて一瞬つながったのだろうか。高校時代から星空を見上げることが好きで、私の誕生日にその日の天体図を書き写してプレゼントしてくれたことがある。そんな彼なら、何と言うだろうか。


旅立つ男ではないが、人の心にはロマンのかけらが欲しい。



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2022年1月4日火曜日

思ひ侘び

 





知り合ってから何年になるだろう。毎年決まって1月1日の早朝に新年の挨拶をメールでもらっていた。真っ先に君に挨拶を送るよ、といった具合で、ほんの数行ほどの内容。それに対して、近況を含めた返事を添えて、毎年前年に撮影したものの中から厳選した画像による新年のご挨拶メールを送ったものだった。


ところが、どうだろう。今年はひっそりとしている。こちらから、黄金色に輝くノルマンディーの海岸の画像の新春のご挨拶メールを送っても、返事がこない。


元気にしているのなら、いいのだが、恒例のメールが来ないと、どうも心配してしまう。知り合った頃には頻繁に会っていたし、随分とメールのやり取りもしていた。ここ数年は、彼の引っ越しもあって、年に数度あるかないか。昨年は、確か年賀のメッセージをお互い送り合っただけだった。


元気で活躍していることを心より願っているが、どうしたものだろう。ひょっとしたら、ちょうどフランスに戻って来ていて、明日あたりにもガレットデロアを手に、顔を見せに我が家の門をくぐって来るかもしれない。


そんな、たぶん可能性が全く少ないことを夢見ながら、去る者は日々に疎し、などと寂しく思う。彼や、あの当時の仲間たちと一緒に過ごした時間が愛しく思われる。



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2022年1月3日月曜日

できる女はDIYがお得意

 





こんなタイトルにしてしまったら、今ではジェンダー平等の精神に反するとか、言われてしまうのだろうか。まあ、ここはクッカバラが好きに囀る場なのだし、ポイントは全く違うところにあるのだから、このままにしておこう。


母の本棚にあった本のタイトル、「聡明な女は料理がうまい」。確か赤毛のアンシリーズやスタインベックの「怒りの葡萄」、バルザックの「谷間の百合」と一緒に並べてあって、いやに存在感があったことを覚えている。中学生時代の単純な私は、聡明になるためには料理をしなきゃとばかりに、夏休みには毎日一品を作っていた。もともと台所にいることが好きで、母が料理をしている時には必ず傍にいて、手伝いたがったものだった。


料理がうまい人間がすべて聡明ではないことは自明なのだが、そんなことは生意気な中学生には問題ではなかった。


二番煎じはいただけないとは分かりつつも、この「聡明な女は料理がうまい」のタイトルをもじって、「できる女はDIYがお得意」と宣言したくなってしまう。


が我が家のソファーカバーを型紙から起こして、選んだ生地を裁断し、2、3日で縫い上げてしまったことは以前ここでも紹介したが、なんだかそのDNAを色濃く受け継いでいる様子なのが長女バッタ。


食器洗浄機の取り付け(排水、注水といった水回りを含めて)、シャッターの巻き上げ修繕、暖房機の修繕、とにかく何でも手掛けてしまう。つい先日もトイレの水タンクの調子がどうもおかしいと分解し始め、ゴムのバルブの調整をし、必要な部品を買い求め、さっさと修理してしまったのだから、舌を巻く。本当に関心してしまう。


最近は何でもYouTubeで丁寧に説明をしている動画があるので、DIYの対象幅も実施する層も広がっている気がする。そのうちに、庭の片隅に放置されているおんぼろ小屋を使えるように改修するかもしれない。その気になるように、ちょっと仕向けてみようか。



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2022年1月1日土曜日

謹賀新年

 




新年明けましておめでとうございます


希望に溢れ輝き、幸せに満ち満ちた年となりますように



クッカバラ