一日の疲れた身体をドアに預け、ごとごとと揺られる儘にぼんやり。
車両の見開きドアの半分以上はガラスだが、質が良くないのか、
或いは日々の疲れた人々の汗と脂がそうさせるのか、薄っすらと膜が張られたかのよう。
それでも、もう八時近くなる夕日は朱色に輝いて目を刺す。
青空にたなびく雲も刷毛で色付けられたように輝いている。
と、ぼんやりと空の一部が虹色に染め上げられている。
思わずはっとして、見知らぬ隣の乗客に声を掛けてしまうところで、留まる。
そうして、ゆっくりと車内を見渡すと、誰もが下を向き本に夢中か、携帯を使っている。
だあれも空の虹色のまばゆい輝きに気が付いていない。
遠い昔、未だ高校生だった頃、双子の彼女と一緒に登校の途中、空に数体の未確認飛行物体を認める。変な光線を出してジグザグ飛ぶもの、同じ場所にとどまっているもの、ひゅんひゅん飛ぶもの、兎に角、一目で通常の飛行物体ではないことが見て取れた。「あっ、UFO!」大声で叫んでも、不思議なことに、誰も立ち止まらない。登校時だったので、登校する生徒達で道はにぎわっていた。知り合いに声を掛けても、反応がない。あんまり二人でぼうっと立って眺めていても、空の状態に変わりはなく、時間ばかりが経過し、学校に遅れることも心配になって、諦めて歩き出したことを覚えている。どうして、誰も不思議がらないのか、不思議だよね、と二人で話し合いながら。
そうやって、気が付かないうちに自然は刻々と姿を変えているのだろう。
そう思うと、この天空の虹色の輝きに出会えたことがとても貴重に思えてくる。
駅に近づいたのか電車はゆっくりと速度をゆるめる。
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