底の見えない、てらてらと黒いセーヌを覗き込みながら、
天気予報はやはり当てにならない、と身体を震わせる。
橋の上では、
パリに向かう車が、思った以上にすぐ脇を猛スピードで駆け抜ける。
所在なく、車の往来を眺めながら、
ああ、この感覚は以前にもあったな、と思い当たる。
もう10年以上前のこと。
日本では学生時代に一度で路上試験にパスしており、
ちょっと自信のあった運転免許。
馬鹿なことに、フランスの免許と交換する時期を逃してしまい、
フランスで新たに免許獲得をすることになる。
ところが、緊張からか、試験の方法が全く違うからか、
どうも上手くいかない。
何度も悲しいほどに落ちてしまう。
もはや、フランスでは運転できないか、と思うまでになる。
が、
街は車で溢れていて、それこそ老若男女、誰もが運転をしている。
これだけの人が、あのひどく緊張する試験を突破している、という事実に愕然とし、
同時に、強い心の支えとなる。
いつか、私も、彼らの仲間入りができるはずだ、と。
クリスマスが差し迫る冬空の下、
業務用のトラック、ミニバン、軽自動車、セダン、
賑やかに走り去って行く。
彼らの多くは、皆、仕事を持っているのであろう。
そう、
多くが就業しているはず。
そう思うと、ちょっとだけ心が軽くなった気がする。
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