「こんにちは。
お久しぶり。」
自分の声に、想像以上に緊張していることに、驚く。
相手は、じっと見つめ返し、いや、そんなに遠い昔ではない、と微笑む。
勧められ、椅子に座る。
緊張しているのが、相手には伝わるのだろうか。
リラックスして、とささやかれ、瞳が接近する。
金がところどころに鏤められた緑の瞳。
こんなに透明だったかしら、と思う間もなく、
たまらなく、眼をつぶってしまう。
つい、左手を挙げてしまい、
相手が動きを止める。
いや、まだ大丈夫。覚悟して来たのだもの。
その様子をちゃんと受け止めて、
「続けますよ。」緑の瞳が伝える。
目をつぶりながら、
緑の瞳を必要以上に感じ、
生い茂った緑と木漏れ日を思う。
「さあ、今日のところは、もうお終いです。」
ぱちり、と目を開ければ、
緑の瞳が見下ろしている。
慌てて、リクライニングシートが正常位置に戻る前に、
身体を滑らせて立ち上がる。
我慢できるなら、麻酔は極力止めようと思う反面、
痛いのなら、局部麻酔で凌ごうとも思っていた。
なんとか、我慢ができたかな。緑の木漏れ日に救われたかな。
さあ、次のアポイントを取らないと。
これで最後となるはず。
ゆっくりと、手帳をめくる。
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