ホテルは悪天候で足止めを食らってしまった旅人の為、のんびりとした時間を過ごしたい人の為の設備も十分備えていた。マッターホルンを眺めながら泳ぐ屋外プール、しっかりと泳ぎ込みたい人の為の室内プール、そして、ジェットバス、ハマン、高温サウナに低温サウナ。
前日にチェックしていたが、ジェットバスやハマン、サウナは水着の着用はなしだった。20代の頃、バーデンバーデンのサウナに行って、男女混合にも関わらず、皆生まれた時の姿を惜しみなく晒してのんびりとしている光景に唖然としたことを思い出す。郷に入っては郷に従え、の教訓を実地に活かしていたものの、流石に男性の一物が目に入った時には回れ右をしてしまっていた。
今はそんなことぐらいで驚きもしないが、母が嫌がるであろうことは聞くまでもないことであった。しかし、前日の様子であれば、そして、午後の早い時間であれば、施設はほぼ無人状態。貸し切りになるであろうと踏んでいた。そして、神は我々に味方をした。いや、きっと、これもご先祖様のご加護なのであろう。
たっぷりとゴージャスな空間を二人だけで楽しむことができた。
ジェットバスで疲れた身体を心地よくマッサージされ、私は夢心地になっていたし、母は痺れている腕や、転んで打った脚をジェットでマッサージされ、リラックスしているようだった。ハマンでは、スチーム効果でじっくりと骨の髄まで温まり、サウナでは、ふつふつと噴き出る汗とともに疲れまでもが流れ出て行ってしまうようだった。
シャワーを浴びてガウンを纏い、サンデッキに出ると、マッターホルンの姿が眩しく目に入った。
翌日には新たな目的地に向けて旅発つことを思うと、ゴージャスな部屋に未練を感じ、もう少しここでゆっくりしたいと願い、今回の旅の云わばクライマックスを既に見てしまったことに対し、寂しさも感じた。母の怪我が精神的にも肉体的にも随分と早く回復したのは、ひとえに、このホテルの快適さと窓から覗くマッターホルンの姿のお蔭に他ならなかった。
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