2023年11月21日火曜日

夢のエベレスト街道トレッキング~カトマンズ編 出会い

 




トランジットをしたデリーの空港で非常に乱暴で高圧的なセキュリティ検査を受けた後だったからだろうか、カトマンズ空港のセキュリティ検査は非常にのんびりとしていて、ビザの取得もスムーズで、拍子抜けしてしまった。心配していた荷物も、そんなに待たずにターンテーブルに載せられて出てきた。後は2時間後に成田から到着する、母と相棒を乗せたネパール航空を待つのみだった。


到着ロビーは閑散としていて、荷物を受け取るターンテーブルと両替のための銀行の窓口があるだけで、本当に何もなかった。ゆっくりと通路を通って先に進むと、SIMカードを販売する携帯オペレータのカウンターが散見され、タクシーの手配カウンターが見えて来た。取り敢えず最寄りの椅子に座り、空港の無料WIFIサービスがあることを期待して、接続を試みた。


ここで地球の歩き方やガイドブックを出してもいいのだが、なんだか変に目立つと鴨になりかねないと警戒し、大人しく携帯を操作、確実とは言えずも、時々無料WIFIサービスに接続され、暫くはその恩恵を享受していた。タクシーサービスのカウンターの男性が、長いこと椅子に座っている私を不審に思ってか、声を掛けて来た。


日本からの便で来る家族を待っていると告げると、この下の階に行けばカフェがあると教えてくれた。確かに、何もないところにずっと座って待っているよりは、カフェで待っている方が良いかと意外に急なスロープを降りて階下に行ってみると、小綺麗なカフェが一つぽつんとあった。


カフェはオープンスペースになってはいるものの、申し訳程度の椅子とテーブルが雑多に置かれてあるだけで、利用者は一人もいない。隣のパイプ椅子が並んでいる、所謂待合スペースには、出迎えの人々が数名座っていた。


取り敢えずカフェで炭酸水のボトルを買って、パイプ椅子に腰を掛けること数分。なんだかお尻やリュックが濡れている感じがするので、手持ちの何かが漏れたのかと慌てて立ち上がって点検してみると、何のことは無い、掃除したての椅子に座ってしまっていたことが原因と判明。


驚くなかれ。掃除部隊はパイプ椅子に水分たっぷりの洗剤を振りかけ、水浸し状態にさせたところを、吸水機を使って水分を取り除いていた。掃除中の看板があるわけでもなく、うっかりと腰を下ろしたが最後、パイプ椅子に残っていた水気をしっかりと吸収する役目を否が応でも担うことになってしまう。


やれやれ、と立ち上がって、どの辺からパパラッチをしようかと、望遠カメラをセットして母と相棒が現れるところ待つことにした。丁度日本からのお客さんを待っている旅行会社のスタッフもいて、成田からの便が無事にカトマンズに到着したこを知って、大いに安堵した。


スロープを使って出てくるだろうと待ち構えていたのに、母と相棒はエレベータで出てきて、私の姿をきょろきょろと探している。慌てて飛び出して出迎えると、「どこにいたのよ!」と母の元気な一声が返って来た。


三人で揃って、旅行会社が手配してくれた運転手さんの姿を探すが、一向に見当たらない。空港の建物を一旦出て、出迎えの人々が並んでいるところに行ってみるが、我々の名前を書いたカードを持っている筈の出迎えの人が見つからない。


母の手前、焦り出し、旅行会社にメールを送り、改めて空港に戻って、そう多くはない出迎えの人々を一人ひとり確認したが、やはり見つからない。先ほど話をした旅行会社の人に、我々が利用する旅行会社を知らないかと聞いてみると、別の人が、ああ彼なら知り合いだよ、と携帯で電話を入れてくれた。そして、外の出迎えの人が並んでいるところに待っていると、教えてくれた。


先ほど行ったが、そんな人はいなかった、と言うと、あそこにいる筈だから、もう一度行くように、と言う。半信半疑ながらも仕方がない。母と相棒には空港で待ってもらい、願うように行ってみると、果たして、私の名前が印刷された小さな紙を持っている男性が目に留まった。


あ!こんにちは!私です!探したのですよ、どちらにいらしたのですか?今、母と妹を連れてくるので、お待ちください。そう英語で伝え、大急ぎで母と相棒を連れに戻った。出迎えの男性は小柄で、とにかく人懐っこい笑顔で待っていてくれた。


わあ!さっきはいなかったよね。とにかく良かったわ!ありがとうございます。


車は比較的新しく、綺麗だった。無事に荷物を後ろに載せ、三人で並んで座っても十分な余裕がある程、スペースある車体だった。出迎えの男性には、我々がそれぞれ日本、台湾、フランスと別々の国から来ていることや、ネパール訪問は今回が初めてのこと、ヒマラヤトレッキングがとても楽しみなことを、話した。


男性は、なんとインターナショナルな家族なのだ!と大いに驚いていた。そして、男性自身、日本語が非常に堪能であることが判明し、車の中での会話は大いに盛り上がった。人柄の良さがにじみ出てくるような方だったので、先ほどは出迎えの人が来ていないので心配して、空港にいた別の旅行会社の人に、男性のボスに連絡してもらってしまったので、後でボスからお小言があるかもしれませんが、すみません、と伝えておいた。


ほどなくして着いたホテルで、予め用意しておいたチップを運転手さんに手渡し、出迎えに来てくれた男性にも手渡そうとすると、いえいえ、結構ですと、身振りで断って来た。我々が到着した時に、いなかったことを申し訳なく思っているのだろうか。そんなこと心配せずに、どうぞ受け取って下さい、とやや強引に手渡すと、にんまりと笑って、では、とロビーのカウンターにあった心づけ箱に入れようとした。


いえ、これは出迎えに来てくださったことへの感謝の気持ちなので、ホテル向けではなく、個人的にどうぞお納めください。そういうと、笑顔を一層深めて、そこまで仰るならと、受け取ってくれた。


そのやり取りを一部始終見ていたホテルのスタッフが、ちょっと面白がって「ここのオーナーです」と紹介してくれた。えっ?


え、ええっ?オーナー?


ホテルのオーナーでもあり、今回の旅のアレンジを依頼している旅行会社のオーナーでもあるという。ということは、空港で別の旅行会社の方が電話を入れた相手だったのか!それよりも、オーナーさんを出迎えの番頭さんのように扱い、ましてや、チップまで強引に手渡してしまったではないか!


いやあ、これはとんでもないことをしました。大変失礼いたしました!


慌てて謝ること頻り。ラクスマンと名乗ったオーナーさんは、全く問題ありませんよ、と、それでも大いに愉快そうに笑った。我々も、早とちりを大笑い。一緒に心の底から愉快に笑い合った。


「ビールでもいかがですか?ご馳走させてください。」


旅の端から早とちりの勘違いで大笑いとなったが、それこそ幸先抜群に良さそうではあるまいか。ありがたく冷たいビールをご馳走になりながら、時差ボケで寝不足の身体に、じんわりと幸せ感が満ち溢れていくのであった。


母と双子の娘、3人の旅はまだ緒についたばかり。


夢のエベレスト街道トレッキング

プロローグ


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