2013年11月10日日曜日

あの日から12年



お友達をたくさん呼んでパーティをしたいと言っていた末娘バッタ。
末っ子の割に物分かりが良く、
強引なお願いができないタイプ。

だから、彼女のお願いは、お願いというより、遠慮がちで、
だったらいいけど、駄目だよね、といった風に終わってしまい、
こちらも、本気で受けていたら大変だと、
流してしまっている。

ちゃんと目を見て言ってあげればよかった。
ごめんね、ママは今、お友達を迎える心持ちになれない、と。

そのうちに、胸を張って生きていくスタイルに戻ったら、
いつだって呼んでいいよ、って。

その日は土曜だったので、
ランチに大好物の鰻の蒲焼にする。
久々の香ばしいタレの香りがキッチンを満たす。
ふっくらの炊き立てご飯にのせて、
いただきます。

夕食は、リクエストでチーズフォンデュ。
適当に美味しそうなチーズを選び、
抜群に美味しいと思っている白ワインを、ついつい数本購入してしまう。

デザートはサプライズにして欲しいとのこと。
ガンガンに冷房が効いているスーパーで、
外も例年並みの寒さ。
ゼリーやムース、アイスクリームは凍えてしまうよ、と長女バッタ。

そこで、本当に久しぶりにパイ生地を作り、
白焼きしたところに、バナナを二本、薄切りにしたものを敷き詰め、
小麦粉を使わない、卵とバター、チョコレートの生地をとっぷりとかける。
アーモンドのスライスを飾りに散らし、オーブンで25分。

いつもと違ったチョコレートケーキに、末娘バッタのまん丸い目は一層大きくなる。

アルコールを飛ばすとはいえ、これだけのワインと、ミラベル酒を入れて、
一体子供たちに悪影響はないものか、と心配してしまう。

友達に呼ばれて出かけて行った長女バッタから、
実はディナのお呼ばれで、帰りは遅くなる、末娘バッタには悪いことをした、
ごめんね、
とSMSが入る。

それを告げると、一瞬、末娘バッタの体が固まる。
でも、すぐに、
あら、それなら、チーズフォンデュがたっぷり食べられるよね、と返事が返ってくる。

私が思っている以上に、彼女にとって、誕生日とは意味合いが深いのかもしれない。

熱々のチーズフォンデュは最高に美味しく、
皆、頬を真っ赤にして、おしゃべりも楽しく、あっという間にパンがなくなっていく。

お腹が一杯になったから、先ずはビデオを観て、その後でケーキにしよう、となる。

リオが舞台のビデオを観ながら、こちらは、うとうととしてしまうが、気が付くと、もう長女バッタを迎えに行く時間。そして、他の子達は、ベッドに行く時間。

それでも、長女バッタの帰りを待っていると言う。
皆でケーキを食べようと言う。

そうか。

友人一人を送っているからか、そう遠回りした訳でもないのに、どんなにすっ飛ばしても、帰ってきた時刻は、もう翌日に差し掛かるころ。

二人はちゃんと待っていて、驚いたことに、息子バッタは宿題なんかしていた。
そうして、皆でチョコケーキをいただく。

こうして書きながら、それでも、歌も歌わなかったし、ロウソクも立てなかったことに思い至る。写真も撮っていない。
フォンデュでお腹は満ち足りており、一旦うとうとしてしまった身体はベッドを求めていた。

ああ、末娘バッタよ。
お誕生日おめでとう。
もう一度、これから、しっかりと抱きしめてあげよう。
そう、彼女がこの世に登場した、あの日のことを詳しく教えてあげよう。
どんなにママが嬉しかったか、伝えてあげよう。






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