バッタ達には夜の演奏に向けてのリハーサルが待っている。集合時間の午後4時までに、会場近くのSan Giovanni in Laterano大聖堂を見学しようと計画していたが、夏日のような日差しが容赦なく頭上から落ち、バイオリンに譜面台、演奏用の靴や衣類が肩に圧し掛かり、どうやらバッタ達は元気がない。ラテン語クラスで3年前に来たことがあるという長女バッタは、目印のオベリスクがないと小さな声でつぶやく。ローマで最も高いという。取りあえずは、日陰を作っている聖堂の入り口の階段に座ることにする。とにかく、聖堂だらけなので、地図をにらみながら、一体これがどこの聖堂なのか半ば諦めかけながらも、見つけようとしていた。向こうの通りには、何かの壁が一部だけ残っており、その小さな窓のような空間からは、青い空が覗いていた。
「ああ、ここでいいんだよ。」
長女バッタから地図を奪って、ざっと見ていた息子バッタが告げる。どうやら、オベリスクは建物の向こう側にあるらしい。ローマ一の高さを誇るオベリスクがここから見えない筈がない、と尚も頑張る長女バッタに、息子バッタが高らかに笑う。「ローマ一、ってことは、バチカン市国を含まないってことだよ。だから、Piazza San Pietroにあるオベリスクよりは、低いのかもしれない。」
仰ぎ見れば、大聖堂らしき風格。ファサードには聖人たちが居並んでいるではないか。建物をぐるりと回ると、確かに広場が現れ、オベリスクが屹立している。
そうなると、やはり中を覗いて見てみたくなる。荷物をバッタ達に預け、長女バッタと連れ立って異空間に入る。
思わず跪きたくなる荘厳なる趣が壮大なる空間によって圧迫感なく迫ってくる。今、読みかけのケンフォレットによる『大聖堂-果てしなき世界』のマーティンとカリスの息遣いが聞こえてきそうな思いに囚われる。
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