タピオカと言えば、臺灣の珍珠奶茶。太めのストローから、甘いミルクティーと一緒にどろんどろんと口の中に入ってきて、思わずびっくり。むちむちっとした食感が嬉しく、小寒い時にはホットの珍珠奶茶。うだるような暑さの時には、きりりと冷えた珍珠奶茶。世の中、あんな美味しい飲み物があるのかと当初は感動したもの。いや、今だって帰りの臺灣桃園國際機場にて、最後の一杯を求めてしまう。
昨年、末娘バッタが二ヶ月のオーストラリア滞在を経て帰国した際のスーツケースの底に、この乾燥タピオカの袋が潜んでいた。デザートの『frog egg/カエルの卵』が美味しくて、材料がフランスにないかもしれないからと、一袋貰って来たと言う。フランスでは何故か『perle du japon/日本のパール』の商品名で箱入りで売られている。いや、実際は手にしたことがないので、大きさや品質などは不明。我が家では、末娘バッタが何度かオーストラリアから持って帰ったもので、デザートを作り、楽しんでいた。
そうして、今回のブラジル。当地では『mandioca/マンジョカ』の粉を『タピオカ』と呼んでいる。その粉だけを、水も何も入れていない、ただの粉だけを熱したフライパンに薄く敷いて、ごく簡単に両面軽く焼き上げる。すると驚くべきことに、真っ白な薄い皮が焼き上がるのである。それを『クレープ』と呼んでいて、その中に削ったココナツとエバミルクを入れて朝食の一品としている。
そもそも、『タピオカ』の原料こそが、『mandioca/マンジョカ』。これまで『タピオカ、日本のパール』と呼んでいた球状のものは、この『mandioca/マンジョカ』の粉を加工したもの。糊化させたタピオカを容器に入れ、回転させながら雪だるま式に球状に加工し、乾燥させたものを指す。
ここまで煩く拘らなくても、と思われるかもしれない。しかし、拘らなくてはならない理由がある。
先日より『bergamote/ベルガモット』を探し求めている。疲れた時には大いに癒されるアールグレイの香りの素であるベルガモットがマルシェで手に入ると耳にし、非常に興味を持ち、ぜひ、そのベルガモットのゼストとジュースで、ベルガモットケーキを焼き上げたいと思っていた。しかし、マルシェの隅から隅まで彷徨えど、見つからない。自然食のスーパーに立ち寄る。ここにもない。どうやら季節は終わってしまった模様。そんな時、ふと『tapioca/タピオカ』の袋が目に入る。真っ白な小さな顆粒状。末娘バッタがオーストラリアのアジア食料品店から買って来た『frog egg/カエルの卵』の材料と材質が違う。あの袋には『tapioca perle/タピオカパール』と明記されている。そうか。フランスでも、ブラジル同様、『mandioca/マンジョカ』の粉を『タピオカ』として販売しているのか。
小躍りして二パックも購入。既に、得意の思い込みはスタートしていた。
帰る道々、ポンデケージョを作ろうとウキウキしていた。パルメザンチーズの入った、『mandioca/マンジョカ』の粉で作ったチーズパン。香ばしくて、周りはカリリとしながら、中味はモチモチの熱々。
そうして、いつものように時間をかけて幾つものレシピを見比べ、今回使わせてもらうレシピを決め、書き写し、早速作業開始となった。が、どうも、どうも、様子が違う気がする。タピオカの粒が意外に固く、生地としての滑らかさに欠ける。それでもなんとか、丸を作り、オーブンプレートに並べる。あの粉を焼いただけでクレープが作れたのだから、このタピオカは熱を加えられると、しっとりと膨らむに違いない、そんな風に考え、自分を安心させようとしていた。
180度のオーブンで焼き上げる間、香ばしさでキッチンは幸せに包まれる。しかし、どうみてもハリネズミの様相を呈したボールは丸みを帯びてこない。
20分後、6つの期待に輝く瞳の前に、熱々のハリネズミパンが供される。
中はモチモチ。チーズとタピオカが絶妙な味わいを醸し出している。問題は外側。硬さの残る粒は、香ばしいというよりは、乾燥した米粒を焼いた感じ。膨らんでもいないし、頑なにそのままの姿を留めている。
バッタ達は、それぞれに美味しいとの歓声を上げていたが、作成者の意図とは全く違ったものとなってしまう。ひょっとしたら初めての失敗。
そうして、しみじみと冷静になって思う。自然食のスーパーで買った『tapioca』はパール状ではなかったが、『mandioca』の粉を糊加し、乾燥させたもの。粉とは別物であることを再確認するに至る。
溜息。
しかも良く見ると、袋に貼ってある写真はスープやソースに濃さを出す特徴を生かした一品ばかり。
改めて『mandioca』の粉を探し求めて、マルシェに繰り出さねば。
しみじみと、デファクトスタンダードの重要性が思われる。
なんと紛らわしい。いや、これも己の思い込みの激しさからなす結果か。てかてかとした茶色の細長い芋、mandiocaが不敵に笑っているように思われる。
日々是精進。
終わりなき学びの道。
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皆さんからのコメント楽しみにしています
クッカバラさん
返信削除ブラジルに行ったお友達からポンデケージョのミックスをお土産に頂きました。 その美味しさを再現したく何度も試みたのですが途中で諦めました。 こちらのタピオカ粉も片栗粉の代わりみたいにして使うアジア人が多いです。 ポンデケージョのレシピ成功したら是非紹介してください。 私はタピオカパールドリンクも失敗したんですよ。 私が買ったタピオカパールは水につけていると全部溶けてしまいました。 一回挫折して終わりでした。
Chiblitsさん
返信削除こんにちは。コメントありがとうございます。
ポンデケージョ。マンジョカの粉が手に入らずに、取り敢えず片栗粉で代用し、加えてジャガイモのマッシュを入れたものをご紹介します。たぶん、家庭毎に色々な味があるのだと思い、適当に手元にある材料で作ってみました。恐らくは、マンジョカの粉の代わりに、片栗粉、コーンスターチなどで全く問題ないのだと思います。次回はマッシュポテトを入れずに作ってみようと思っています。
さて、ジャガイモは500グラム。こちらを皮を剥いて、茹でて、マッシュにします。そこに片栗粉200グラム程度を混ぜます。削ったパルメザンを80グラム、削ったグリュイエールを10グラム混ぜます。そして、予め軽く撹拌していた卵を一つ入れ、牛乳大匙3杯を入れ、かき混ぜます。手頃なボール状に固め、180度に熱したオーブンに入れ20分程度こんがり焼きあげます。これで40個強できました。因みに、マッシュポテトを使わない場合は、ベーキングパウダーを入れたり、牛乳の量を増やすことになるみたいです。
それから、タピオカパール(ドリンク用)ですが、これも原産地によって製法が違っており、戻し方も変わるようです。恐らくChiblitsさんが水から戻して、どろんとした液体にさせてしまったものは、がんがんに沸騰させた中に一気に入れ、20分ほどぐつぐつと煮込み、更に弱火にしながらも沸騰状態を保たせ、中までしっかりと煮込む方法のものだったのだろうと思います。次回タピオカパールを入手された場合は、ぜひどちらの方法がベストなのか、チェックなさってみてください。
コーヒー粉入りのラブですが、子供たちのことを考え思いとどまってしまいました。カフェインが強すぎたら困るかしら、と。隠し味と思えばよかったのですが、変なところで親の顔が出てしまいました。でも、とっても気になるし、先日のサンドイッチのお写真はとてもおいしそうでしたし、次回はぜひ試してみたいと思っています。
またどうぞコメント残してください。とっても嬉しかったです。