2018年9月6日木曜日

新しい靴








トレッキングシューズなるものを、数年前に購入したことがある。キャンプもするし、山も歩くということで、しっかりとした、それでいて通気性があって、軽い素材を。色々と悩んで、結局はスポーツ専門の量販店で水色の靴を選んだ。防水加工の素材で、なかなか気に入っていたが、二日目あたりからどうも足の前が詰まっているように感じられてしょうがない。

通常のサイズより1つか2つ大き目のサイズにすべき、とは、その後何かで読んだ。いや、ちゃんとわかっていた筈。足が膨張してしまったのかもしれない。サイズの合わない靴程履いていて辛いものはない。あれから、2回ぐらい山歩きをする機会があり、履いて行ったが、やはり途中で足が痛くなってしまう。履く機会を失って、物置の奥にしまわれてしまった。

今回は、歩いている時に泣き言は言いたくなかったし、言えるはずもなさそうだった。なにしろ、母親とのトレッキングの旅。思い立った時、既に8月に入っていて専門店はどこも夏季休業中。大きなショッピングモールにある登山グッズ専門店を目指して、週末車を飛ばした。

専門店の店員は面白いぐらい客を見る。既にバーゲンセールは終わっていて、手を出しにくい高価格がついている商品を眺めながら、求めている品に違いないと思われる靴を手に取ってみた。と、店員がさっと近寄ってきて、どんな靴を探しているのかと聞いてくる。山歩き、と言えば、どのぐらいの期間行くのか、と聞かれる。いや、1日の山歩きですよ、と答える。と、ならば、ここにはお探しの靴はありませんよ、とぴしゃりと言われてしまう。

慌てて、山でキャンプするわけではないのですが、10日間ばかり毎日スイスで山を歩くんです、と言うと、にっこりとして、それならこの靴こそ貴女が求めている品ですよ、と。この靴なら、川べりだって、岩の上だって、砂利道も、雨の中も、全く問題ないし、履いているうちに味わいが出てきますよ、と勧め始める。とどめに、私もトレッキングシューズはこれを愛用して10年になります、と。

今回は母と一緒なので、奮発して一部山間部のリゾートを予約している。ホテルにこの靴で大丈夫だろうか。すると今度は、自分の義理の両親がスイスに住んでいて、スキーの後にレストランに一緒に行くが、この靴で全く問題ないと言う。

義理の両親の話はどこまで本当なのか分からないが、履き心地も悪くないし、とにかく色合いが気に入ってしまった。今回は専門サイトで十分に下調べをし、履いた後のかかと側に指一本入れられる余裕のあるサイズにしようと決めていた。ところが、いざ指一本入れようとすると、いつものサイズより2つも3つも大きめのものになってしまう。こんな時、どうしようか。足の指を動かしてみると、ちゃんと動く。この余裕も必要らしい。思い切って、この大きさに決定。

実際に山登りをするまで、毎日履いて慣らしておくようにとアドバイスを受ける。

高価な買い物をした時は、どうしてこうも心が弾むのだろうか。既に心は大自然の山を駆け巡っていた。足取りも軽く、早速今度はスポーツ専門量販店に行き、ゴアテックスの上下、リュックを捜し求める。天気予報によると我々の道中は雨模様。パリが干からびる程暑くて雨なんか暫く一滴も降っていないのに、お隣のスイスはそうでもないらしい。山の天気はそれこそ分からない。何といっても、雨の中、ぐっしょりと濡れて惨めな気持ちにはなりたくないし、雨が降っているからと外出取り止めなんて、それこそ惨めたことはしたくない。せっかくのバカンスなのだから。

バッタ達がいない8月。今年は2週間、日本から母を迎えてスイスの山を楽しむ計画を立てていた。エジプトに行きたい、インドがいい、としきりに言っていた母がどうしてスイス行きに賛成したのか、良くは分からない。とにかくも、幼い頃に部屋に掛けてあった世界の山シリーズのカレンダーで、憧れというか、この世のものとは思っていなかったマッターホルンをもうすぐ間近に見ると思っただけで、胸が震えた。




にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています

0 件のコメント:

コメントを投稿