バカンスに行ってしばらく音沙汰がない末娘バッタから、一行だけメッセージが夜中に届く。
「早めに家に帰るかも」
一週目は仲間の一人に誘われて、フランス西海岸、ラロレシュルの南のロワイヤンにある彼の海の家で10人と過ごし、二週目はリセ時代の友達がロワイヤンに合流、その後三週目からブルターニュの島に移動し、リセ時代の仲間たちとやはり10人程度でキャンプ。四週目、つい先日まで一緒に勉強に励んでいた仲間たち15人とブルターニュ半島の西の端にある海岸で過ごす。
今はその四週目が始まったところ。
天候が良くなく、冷え込んできているので風邪でも引いたのだろうか。或いは、仲間の誰かと口論でもしたのだろうか。
送られてきた写真を見ると、砂浜なのに誰も寝そべっていないし、運動靴姿で、あちこちに散らばっている。集合写真というわけでもなさそうだし、なんだか宝探しでもしているのかと思わせる姿格好。それぞれに、何かに心奪われている様子。
誰も、写真を撮られていることを気にも留めていない。
まったくね。なんて我儘娘なのだろう。これだけ好き勝手に遊び惚けているのに、こうして母親を心配させるなんて。
「どうした?寒いのかな?お迎えに行こうか?」
迎えに来て欲しいなんて言わないことは百も承知。必要あれば電車かヒッチハイクか相乗りで帰ってくるだろう。
恐らく、リセ時代の女友達との別れが辛かったのだろう。9月になれば皆それぞれの大学に戻ることになっている。一人はカナダ、一人はイギリスだったろうか。ドイツで進学している友達は、大学の関係で今年は合流できなかったと聞いている。一週間、毎晩テントの中で積もる話をしても、未だ足りなかったのだろう。
翌日、「せっかくだから、もうちょっと残ってみる」とのメッセージが帰ってくる。添付の顔写真を見ると、なんだか遊び疲れをしている様子。心なしか、顔の線がほっそりしている。風邪を引いたのか、元気さに欠けるが、まあ、好きにするといい。
「せっかくの貴重なお休みなのだから、有意義にね」と、どちらともとれる書き方で返事を送る。
「うん」
ひょっとしたら早く帰ってくるかな、とウキウキした気持ちになっていたが、せっかくのバカンスを途中で早めに切り上げて戻ってくるなんてことはしまい。彼女なりに、目一杯楽しむに違いない。気が付くと、宝探しの仲間たちの注目を一斉に浴びて、先頭に立ってどんちゃん騒ぎをしているかもしれない。
そう、心ゆくまで大いに楽しんでおいで。
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