朝6時、未だ闇の世界が支配する時間に起きて、それでも朝を感じる新鮮な空気を楽しみながら散歩をする。それから急いでパリに行くために、駅までのバスに遅れないように家を出る。無駄に玄関に明かりをつけて、騒々しくしてトンカを刺激しないように、本当にそっと、そっと出掛けることにしている。
バッタ達の時もそうだった。彼らが未だベッドでぐっすりと安心して寝ている時に出ていく。もしも起きてきたら、声を掛け、様子を見て、着替えを出したり、朝ごはんの心配をしたり、忘れ物がないか確認したくなったり、いつの間にか時間が過ぎてしまう。そして、何か思い切りの悪い思いを心に残して出掛けることになり兼ねない。
だから、お互いの平安の為にも、そっと出掛けるに限る。
そのためには、玄関に既に鞄を用意しておくのが常だったし、靴も、すぐに履けるように、いつもの場所に置いてあった。
その日も、いつものように、そっとオーバーを着て、靴を履き、カバンを取って出掛けるところだった。ところが、どうも靴紐がいつもより長い気がした。それどころか、靴が大きいではないかと思った。バスの時間までに余裕があるわけではなかったので、靴紐は最悪バスの中で直せばよいかと、玄関を出て歩き出した。
街灯の明かりで、履いている靴が運動靴で、しかも週末に来ていた末娘バッタが、森に行くために汚れても良いようにと使ったものであることが判明した。それは末娘バッタのものどころか、息子バッタのもの。
ここで引き返したら、バスに乗り遅れることは必至だった。それどころか、静かだったトンカが何事かと騒ぎだすだろうし、それをなだめるために、顔を出してちょいと可愛がってあげねば、私の気持ちも収まらないだろことは自明だった。
えい、ままよ。
息子バッタの運動靴をそんなに汚さずに済んだ、と末娘バッタが言っていたことを思い出し、改めて見てみると、確かに汚れはついていない。しかし、運動靴は運動靴。しかも、サイズも4センチは大きいだろうか。靴紐をしっかりと締め直し、気持ちも切り替え、いざ出陣。
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