地下鉄の階段を駆け上がり、駆け下り、
すれ違う人々にウインクまでしたくなってしまいながら、
オフィスから小一時間ほどの場所まで、メトロを乗り継ぎながら辿り着く。
待ち合わせの場所で待っている背中に飛びつく。
通されたテーブルで、
魔術師のように二つの包みをそっと差し出される。
紫色の紙に丁寧に包装された正方形の小箱に、ワインで名高いお店の名前が見て取れる。
ゆっくりと開けてみると、掌にすっぽりと入る小瓶に、グリオット(さくらんぼ)のリキュール漬けがおとなしく収まっている。赤紫のその粒は、ぷっくらとしていて、口に含むと甘く優しく香り高いリキュールがゆっくりと舌を痺らせるのだろうと思わせる。
一緒に味わう時を思い、軽く眩暈さえする。
もう一つの包みを開けるとき、視線が指輪を射た気がして、ちょっと緊張する。
細い銀のネックレス。
そしてペンダントヘッドはアンブル。琥珀。
白いブラウスのボタンをちょっと外して、つけてみる。
お誕生日おめでとう。
ちょっと早い誕生祝い。
お礼をと思い、席を立とうとするも、がっちりとテーブルで押さえられていて身動きが取れない。
首を伸ばすと、向こうの首も伸びてくる。
どうもありがとう。
熱い烏龍茶で乾杯する。
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