特に食べ物の好き嫌いはなく、初めてのことにもすぐにチャンレンジしたがる、誘われれば喜んで応じ、かなりハードな山歩きや、炎天下の草むしり、門のペンキ塗り、日曜大工、力仕事など、意外になんでも素直に取り組むタイプ。相手に合わせることも苦ではなく、異文化圏にも物怖じせずに入りこめるタイプ。
しかしながら、弱点はあるもの。どうしても好きになれず、行きたがらないから手遅れ寸前になり、仕方なく行けば緊張で汗をかき、惨めな思いになってしまう。
そうならないように、ちゃんと朝、昼、晩としっかりと歯磨きをし、歯間ブラシを使い、寝ながら甘いものを食べるなんて邪道は一回もしたことがないのに。一体全体、どうしてこうも歯、歯茎のトラブルに見舞われるのか。
歯茎が痛いからと痛み止めを飲み、なんとか誤魔化してきたツケが噴出してしまうのは分かる。分かるけど、そもそもどうして歯茎が弱いの?レントゲンで見ると、上顎の骨が薄くなってしまっていると説明を受けたが、なんでぇ。
確かに珈琲は飲むし、ワインも嗜む。しかし、それなりに健康な食生活を送って来たとの自負はある。睡眠時間が6時間、これもそう悪くはないだろう。運動不足だと言っても、意外にてきぱき身体を動かしていると思っている。じゃあ、なんで。
子供の頃、歯で紐をちぎって鋏要らずなんて喜んでいた事実は認める。学生時代に自転車競技部だったので、奥歯を食いしばって頑張る時期があったことは認める。本を読みながら、つい前歯に圧力をかける癖があり、前歯が痛くなることがあったことも認める。寝ながらの歯ぎしりがひどいので、顎が痛くて起きたり、歯に激痛が走ったことがあったことも認める。
だからって。
覚悟をして、歯医者のシートに身を委ねる。最近の歯科医のキャビネにはモダンアートを壁に飾っていたり、BGMにジャズを流すところが多いように思う。ところが、今回の歯科医ではBGMなし。前回は前掛けさえもなかった。今回はナプキン程度の大きさの白い紙を胸に載せられる。そして、なんと、その上に医療器具を並べ始めるのだから驚いてしまう。
時々水飛沫が顔にかかるが、ただの水よ、と大騒ぎしない。若い助手が一人いるのだが、時々歯科医師は彼女に相談しながら、アドバイスさえ受けながら治療を進める。前歯の歯茎が我慢できない程に痛くなる。頭蓋骨に響くほどの刺激を感じる。
完璧主義なのか、何回も、何回も同じ作業を繰り返し、その度に歯茎が痛み、骨に激痛が走る。汗が額に滲み始めているのが分かる。わきの下や背中はもうぐっしょり。
永遠に続くかと思ったが、さっと胸元の紙ナプキンが払われ、シートの背もたれが動き始めた。歯が痛いのは当たり前らしく、痛み止めを飲むように言われる。
鏡の前で力なく笑ってみる。
噛むこと、歩くこと、この能力だけは決して譲らずに守り通そう。そう固く誓う。
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