2022年1月23日日曜日

サーブルの潮汁






ありがたいことに、いつものお店に赤ひげの魚屋さんが戻ってきている。彼が戻った鮮魚コーナーはピチピチの魚が揃っている。我が家のお財布にとっては、ありがたいのかそうでもないのか。ついつい、野菜や果物を買いに行ったついでに、鮮魚コーナーを覗いてしまい、そのつもりがなく行った筈なのに、ひとめぼれをし、鯛、鱸など買ってきてしまう。しかも、一匹だけではなく、数匹。


そんな鮮魚コーナーに、今回はお頭がごろごろと陳列されていた。お値段、おひとつ、1ユーロ50。それが高いのか、安いのか。恐らくこれまでは、ぼんぼんと捨てられていたのだろうが、それを見兼ねた日本人客から声が掛かり、知恵でも付けられたのだろうか。まあ、有難いと言えばありがたい。試しに、大きな頭を一ついただく。


潮汁にするに越したことは無い。なんだか別途購入した鱸よりも大きいお頭ね、と思いながらまな板に置き、ぶつ切りを試みる。これがなかなかどうして歯が立たない。気がついて見たら、まな板が真っ赤。血糊があったのか、それにしては鮮血っぽい、と思った途端、我が指からの血であるあることに気が付く。うっかりと、魚の歯にやられてしまっていた。


確かに、しっかりとした顎にびっちりと小さな尖った歯が綺麗に揃っている。なんだか歯にやられるなんて、ちょっとついていないわ、とげんなりしながらも、指にジンジンと激痛が走り始める。大きいながらも、そのままで塩をし、しばらく置いて熱湯をかけて生臭みを取るべきだったのね、と後悔。或いは鋏を使うべきだったのか。


具合が悪くて寝ていた長女バッタに大声で応援を頼み、カットバンで応急処置。大したことはなくても、血が流れっぱなしでは料理人として失格だし、料理もできない。


ゆっくりと冷水から茹でてアクを取り、じっくりと旨味を出した潮汁はそれでも最高のうまさ。さあ、これから3回は美味しいお出汁がとれるかしら。せっかくだから白菜を手に入れて、最後は白菜鍋にしよう。次回、機会があればこの際3つ、4つはお頭を買ってこよう。むしろそれがメインのお料理になりそうな程の美味しさ。


まだ痛む指をよそに、食い意地なのか、料理人としての興味なのか、俄然次の調理の機会を楽しみにしてしまう。魚の種類は、サーブルか。って、よく考えれば刀の意。体長がスマートで長いから命名されたのかと勝手に考えていたが、鋭い歯が刃のようだからなのだろうか。いやはや。


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