2022年12月16日金曜日

A ce soir !

 





夕方、仕事の合間に携帯を何の気なしに覗いたところ、メールが届いていた。題名も「A ce soir !」。「では今夜ね」といったところか。


差出人は昔の同僚、イタリア人のリリー。彼女のパリのアパートで夕食会に誘われていたが、日程は翌日の夜の筈だった。ちょっ、ちょっと、待ってよ。ちらし寿司を作って持っていく予定にしており、仕事が終わってから海老、イクラ、卵などの材料を買い出しに行き、干し椎茸、人参、隠元などは、下ごしらえをしておこうと思っていた。


メールの本文を慌てて読むと、「今夜は皆に会うのがとても楽しみよ!○○(←私が」美味しい日本料理を一品持ってきてくれることになっているので、私は軽くパスタでも作る予定にしています。誰か、チーズ、デザートを持ってきてくれると嬉しいわ。19時半からお待ちしていますね。では、 « à ce soir ! » 」


ええっ!と思っているうちに、アイルランド人のカレンが「今夜はお誘いありがとう。デザートを担当するわ。」と反応、するとフランス人のドミニクが「チーズは任せて。」、ベロニクがアペリティフ、つまみを持ってくるという。


ちょっと、ちょっと!


慌ててリリーからの最初の招待メールを見ると、なんと私が勝手に一日ずらして認識していたことが判明する。トンカの夕方の散歩をカットすれば、ちらし寿司を作れないことはないが、海老なしとなろうか。ただ、夜家を空けるにあたり、トンカを事前に散歩させないなどということは出来ない相談だった。


なんてこった。慌ててリリーに電話をし、日にちを勘違いしていたことを告げると、大笑いされ、手ぶらで全然問題ないけれど、絶対来てね、と念を押されてしまった。


さてさて、どうしたものか。行かない、という選択肢はないことは確か。慌ててPouilly Fuméのボトルを一本冷蔵庫に突っ込み、先日買っておいたドイツのケーキ、シュトーレンの箱をプレゼント用に包装紙に包んだ。


早めに仕事を終え、トンカを散歩に連れ出し、急いで着替えて凍てついた車に乗り込んだ。年末のパリの夕方はプレゼントを買う人々でにぎわっていて、交通渋滞を覚悟せねばならなかった。それでも、恐らく日付が変わる時間帯に帰ることになるだろうから、電車よりも車の方が確かな交通手段だった。


遠くにエッフェル塔からの光が見え始めてくると、なんだか気持ちが高揚し始めた。夜のパリを運転するのは、久しぶりであることに気が付き、昔の同僚たちに会うことを意外にも結構楽しみにしている自分に笑みがもれた。


ちらし寿司を持ってこれなかったことは残念だけど、それは次回に、ということで。リリーのアパートの呼び鈴を鳴らし、5階まで階段をスキップしながら駆け上った。



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