どん、どん、どん。
ドアの叩く音がするので、お昼前に来ると言っていた息子バッタが早めに来たのかと思い、「待ってね!今鍵を開けるから!」と大声で呼びかけながら、大騒ぎをしているトンカも一緒に玄関の前に飛んで行き、ドアを開けると大きな花束を持った男性が立っていて、びっくりしてしまった。相手の男性は、トンカの歓迎の襲撃に出くわし、大きな花束を高く掲げなければならなかった。
状況を上手く把握できずに当惑している私に名前を確認すると、「マダムに贈り物です。」そういって男性は大きな花束を手渡してくれた。
真っ赤な薔薇の花のブーケに、たくさんの蕾が連なっている真っすぐに伸びたアマリリスの長い茎が3本。非常にダイナミックで、ぴったりのガラスの花瓶がないことが悔やまれた。しかし、必要は発明の母とは良くいったもので、ちょっとした工夫で華やかな雰囲気を壊すことなく、頂いた花を生けることができた。
それにしても、送り主は記載されておらず、特にメッセージも見当たらずに、なんだかぼんやりとしてしまった。ちょうど別件で母から連絡があったので、送り主不明の花束の写真を送ったところ、「どこぞに思い人がいるのではないですか。胸に手を当てて静かに思いを巡らせてみて。」とのこと。
送り主は、名前を告げなくても当然分かるよね、と思ってお花を贈ってくれたのだろうと思う。ごめんなさい。正直分かりません。ひょっとしたら、とは思うものの、確認する術がない。まさか、お花を贈ってくれましたか、と聞いてみるわけにもいくまい。
お礼を伝えたいし、お返しもしたいところだが、なんだか気持ちだけがぼんやりと宙に浮いてしまっている。こちらから何のリアクションもないとなると、つまらなくなって、きっと相手の方から連絡があるのではないか、と一縷の望みを持ちつつ、玄関にもたらされた華やかなノエルの色合いに、目を向ける。
アマリリスの蕾はふっくらと膨らみ、深紅の薔薇は甘やかな香りを放っているが、何も告げてはくれない。
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