音楽家の友人に誘われて訪れた、近所のホームコンサートからの帰り道、音楽ってやっぱりいいよね、と酔いしれていたところ、トンカの散歩仲間、漆黒の毛並みが美しいラブラドールの2歳のラムセスからメッセージが届く。「これから散歩するけど、一緒にどう?」勿論、書き手はラムセスの飼い主。
午後一杯留守にするので、既に午前中にトンカを散歩に連れて行ってはいたが、一人で留守番をさせていたとの思いもあったので、ちょっと遅いが今から散歩に連れ出すのも悪くないかな、と「20分後になるけど」と返事を送った。ただ、なんだか空模様が怪しくなってきているなあと、空を仰いだところ、「遠くで雷が鳴っているので、すぐに帰ることになると思うけど、広場に着いたら一声掛けてね。」と返事が来た。
いつものことながら、家に帰るとトンカから張り倒されてしまうぐらいの大歓迎を受け、じゃあ、ちょっとだけ散歩に行こうか、となった。
となったものの、運動場の近くに差し掛かったところで、ぽつり、ぽつりと空から大粒の雨が落ちて来た。やむなし。家に戻ろうとしたところ、別のトンカの散歩仲間のユリアと出会ってしまった。ユリアの飼い主は、からからと笑いながら、雨が降ろうが、槍が降ろうが、散歩は散歩だよね、と言うではないか。ええっ。そ、そんなもの?
なんだか、ここで家に戻ってしまうと、意気地なしになるのではあるまいか、との意識が働いたのか、働かなかったのか。ひょっとしたら、ラムセスが待っているのではあるまいか、との思いが過ったことは確かではある。
突然雨脚が激しくなり、突風が吹き始めた。たちまちずぶ濡れになり、靴からはがぽがぽと音がした。サッカー場では子供達が大騒ぎをして後片付けをして、逃げるように走り出し、あっという間に誰もいなくなってしまった。
遠くに傘を差している人影が見え、それがラムセスの飼い主だと分かった時には、漸く踏ん切りがつき、更に雨脚が強くなっている中、くるりと回れ右をして家路を急いだ。雨宿りの場所があるわけでもなく、ずぶ濡れになりながら、足早になるとズボンが雨の重さでずるずると落ちてきそうになって、へんてこな格好で兎に角帰り道を急いだ。隣のトンカと言えば、濡れることがとにかく苦手ながらも、ここは他の選択肢がないことを悟ってか、意外に大人しく、しおらしく小走りについてきている。
なんとか家に戻り、トンカをタオルで拭いてやり、じゃぼじゃぼと濡れている洋服を脱ぎ捨て、気温が高いので助かったな、と漸く落ち着くことが出来た。海で泳いだかのように、ちょこっとの間だったが、疲れたのかトンカはひっくり返って寝入っている。ふふふ。
トンカの毛並みがいつも以上に美しいことに気が付いた。ずぶ濡れになって、すっかり泥や汚れが流されたのである。まさに、怪我の功名とはこのことではあるまいか!
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