オートマ車で出来ることなら、マニュアル車で出来ないことは無い、そう宣言した息子バッタの言葉を信じ、かつ、他に手立てもないので、ガレージの前の狭い下り坂をクリオを前進させ、ヤリスの前に停めた。なるようにしかなるまいが、なんとかするしかない、と腹を括った。
ヤリスのフロントカバーはいとも簡単に開いた。動画で見ていた通りの場所に小型の補器バッテリーが鎮座している。なんとかなりそうな気がしてきた。クリオのトランクに常備しているブースターケーブルを取り出し、軍手で先ずは赤のケーブルをヤリスのお洒落なプラス端子の溝にクリップではめる。トヨタは本当にうまく設計されていて、丁度クリップがはめられるサイズの溝があることに、感心してしまった。一方、フランスの誇るルノーはどうだろう。クリオのバッテリーのプラス端子は丸くでかく、クリップで挟めるに問題はなかったが、ややもするとクリップが外れそうになるので冷汗ものだった。
次は黒のケーブルを手に取る。これをクリオのマイナス端子に繋ぐのだが、クリップが上手く嵌ってくれない。何度もクリップが外れてしまう。こんなことでショートする筈がないとは思うものの、もしものことを思うと汗が出てきてしまう。何とかごまかすように嵌めると、今度はヤリスのマイナス端子に。ヤリスの場合はボディーアース、つまり鉄の部分ならどこにでも良く、クリップを噛ませるだけでオーケーとのこと。
上手くケーブルが繋がったので、次はクリオのエンジンをガンガンに噴かせることにする。どうだろう。ここは勢いでやるしかあるまい。なんだかヤリスの方からラジオの音が聞こえてきている気がする。が、ディーゼル車クリオ君のエンジン音がうるさすぎて確認しずらい。5分経ったころに、エンジンを止め、ヤリスを見に行ってみると、しっかりとパネルに電源が入っているではないか!大成功。
ゆっくりと慌てずに、ケーブルのクリップを設置した順番から逆に外していく。ヤリスの電源がなくなる前に走行せねばなるまい。急いでクリオに飛び乗ると、深く考えずに坂道発進でバックをし、クリオを狭い坂道から抜け出させる。勢いとは素晴らしい動力であり、迷いがないとやれてしまうものである。まったく問題なくクリオを平坦な場所に移動すると、今度はヤリスに戻り、ブレーキを踏みながらスタートボタンを押す。柔らかなエンジン音が聞こえてくる。なんて優しい子なんだろう。ディーゼル車クリオの後だと、微かな振動が感動にも似た感情を引き出すのだから驚いてしまう。
ハイブリッド車はどんな状態の時にエンジンを使い、どんな状態の時にバッテリーをチャージするのか、下調べをしておけばよかったが、ここはとにかく運転するしかあるまい。夕食時の街は夕闇が迫る前で柔らかな光が残っている。行き交う車は家路を急いでいるのだろうか。
人生やっぱり捨てたものじゃない。こんなちっぽけなことなのに、こんなに満足感が得られるのだから。何事だろうと訝っているトンカが待つ我が家への帰路を、円満の笑みでやさしくアクセルを踏む。快いエンジン音が微かな振動を伴い、生きていることへの歓喜の歌声のように静かに響いてきた。
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