何度目の挑戦になるだろうか。弾力性のある、塩味がぴりりと効いていて、ガーリックの香りとタイムやローズマリーのハーブの香りが絶妙に混じり合い、オリーブオイルの独特の奥行ある味わいが、イタリアはトスカーナの群青の空に誘う、そんなフォカッチャを作りたかった。
一回目は発酵が足りなかったのだろうか、イタリアのピザのように、しっかりと噛んで味わい、さくさくの歯応えを楽しむものに焼き上がってしまった。息子バッタ曰く、それはそれで美味しい、と。
しかし、ピザを焼きたいわけではない。ピザならトマトソースをベースに塗り、ハムやシャンピニオンを散らし、その上にモッツァレラ、エメンタルなどをふんだんに使い、仕上げにバジルの葉とオリーブオイルを振りかけた、そんなものを作りたい。生地は薄く、ぱりっとしたものがいい。
そう、ピザではなく、切り分けると熱々の湯気がハーブとガーリックの香りをぱっと引き上げる、そんなフォカッチャを作りたかった。口にすると、オリーブの得も言われぬ味わいがトスカーナの葡萄畑を想起させる、そんなフォカッチャ。
二回目はケチで節約を重んじる我が精神を制御し、オーブンを40℃にセットし、しっかりと生地の発酵を促した。レシピ通りに、いや、それ以上に長く、力強く丹念に生地を手で捏ねもした。それなのに、結果は前回よりは膨らんだものの、硬く焼き上がってしまう。味には問題がない。しかし、どうあがいても、ナイフで切った時に香りが立ち上がらない。
毎回試食をすることになった息子バッタから、普通にパンを焼けばいいではないか、とまで言われてしまう。ママ、もうフォカッチャはいいよ、と。
そんな彼の発言に動揺して、挑戦を止めてしまう程の柔ではなく、むしろ、上等じゃないか、次回を味わって驚くなよ、なんて思い、むしろ改善策を考え、改めて挑戦してしまうのだから質が悪い。かくして、息子バッタの悲鳴が続く。
二次発酵が足りない、そんな思いがしていた。トスカーナの陽射しはないが、庭には長女バッタが昨年植えたローズマリーやタイムが香り豊かに濃厚な緑の葉を伸ばしている。オリーブオイルも香り高きバージンオイル。小麦粉はBIOの国内産の小麦を使ったもの。役者には不足はない。
柔らかな陽射しの下で生地発酵を狙おうかとも思うが、トンカが黙っていないだろうし、近所の猫君や鳥たちも大騒ぎするに違いない。じっくりと時間を掛ける、その余裕がないことが原因に違いない。食事が始まる30分前に焼き始めれば完璧なので、タイミングを逆算して考える。特に二次発酵の時間をたっぷりと取る必要がある。
それに、イースト菌をぬるま湯でしばらく溶かし発酵させる必要があるのではあるまいか。
改善点は驚くほどにたくさん出てくる。毎回少しずつ違ったことをするので、毎回違ったフォカッチャもどきができる。今回はどうだろう。思い切って二次発酵の際に湯煎をしてみた。ふんわりと膨らめ、膨らめ、と。
卸したガーリックとタイムの葉、粗塩、オリーブオイルをしっかりとまぶして生地を焼き、ローズマリーは最後の飾りに使うことにした。
え?まさか、またフォカッチャ?
息子バッタの素っ頓狂な声が聞こえてくるが、無言の笑顔で応える。まあ、食べてみてよ。
あ!すごい、ふわっふわだよ。美味しい!今回のが一番美味しいよ!
ふっふっふ。どう?トスカーナの空の透明感のある青さといったら!
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