2011年11月4日金曜日

14歳になる貴女に



貴女をこの手に抱いて、もう14年という歳月がたったことに、心底驚いている。

クリニックでも、看護婦さんから掃除のおばさんにまで、皆に大人気だった貴女。
どのお店に行っても、貴女と一緒だと声を掛けられ、世界が広がった。

いつもと同じ街にいるのに、貴女と一緒だと別の街にいるようで、世界が多面的になったように感じられた。

今でも覚えている。
雪が舞うかと思う程の凍てついた日。貴女を真っ白なマントに包み、ふっかりとした毛布をかけ、こんもりと乳母車に乗せ、毎日のお散歩コースを鼻を真っ赤にしながら、一時の自由な時間を楽しんでいた時。

公園はひっそりとしていて、黙り込んで寒そうに震えている遊具を通り抜け、細い道に入る。と、一本の長いその通りに、所謂ホームレスと思しき人が座り込んでいる。

どうしようか。

治安が悪い場所ではない。
それでも、生まれたばかりの赤子を連れ、初めて我が子を守る本能に心が燃え立つ。そして、異国の地にいる外国人の自分を強く感じる。

長い通りには横に逸れる道もなく、途方もなく続いているかに思えた。

ユーターンしようかとも思った。

それでも、何かが前に向かって進ませた。

乳母車と足音だけが通りに吸い込まれていく。

と、その通りに座っていた人が声を掛けてきた。

「赤ちゃんだね。おめでとう。この子が世界を照らしてくれるよ。幸多からんことを!」

なんてこと!
母親としての誇らしさ、幸せを体一杯に感じる。満面の笑み。感謝で言葉もでない。。。
そして、心細く思って、警戒心さえ抱いていた自分を恥じる。

陽射しが一斉に降り注いできた、そう、ヴィヴァルディの協奏曲が突然流れ出したかの様に。

貴女はママを守ってくれた。
貴女はママに多くのことを教えてくれた。気づかせてくれた。

貴女はそうやって、生まれたときから、既に貴女の人生を歩み始めていた。
その小さな手と小さな足で。

小さいけれど、太陽の灼熱のエネルギーを持って。

そう、貴女は、そんな秘めたエネルギーを抱いて生まれてきたのよ。

いつか飛翔していく、その日まで、ゆっくりと、着実に準備し、自分を磨きなさいね。


14歳、おめでとう。


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