2021年9月26日日曜日

無言の訪問客

 




夕食後、片付けが終わって二階に行こうとしたら、玄関の扉が30㎝程開いていた。家人の誰かが外に出ているということなのだろうか。


それにしてはゴミの収集日ではないし、食後の散策に行くには日も暮れて寒くなっている。



長女バッタは修士課程の論文の締め切りが迫っているので、サロンの大きなテーブルでPC相手に作業をしている。残る一人がシャワーを使っている音がする。


となると、外の人間の仕業としか考えられない。


それって、誰か知らない外の人間が家の中に無断でいるということなのか。


慌ててベースメントに降りる扉の鍵を閉め、恐る恐る一階の部屋をチェックする。「こんにちは。どなたか、いますか。」なんとも間抜けな話。


戦々恐々たる様子が伝わったか、長女バッタも加わり、2階の見回りに抜き足差し足で行く。


抜き足差し足をすべきは、我々ではなく、無断で侵入した人物なのだが、その辺はわけがわからなくなってしまう。寝室に入ると、何故か空気の流れが滞っていて不浄のような気がしてしまう。微かに煙草の匂いがするように思われ、慌ててベッドの下の隙間を見るが、そこには暗闇があるだけ。


お風呂場、トイレ、息子バッタの部屋、物置、そして、末娘バッタの部屋。


それぞれベッドや机の下、クローゼットの中を覗くが、いつもの暗い空間が横たわっているだけで、誰もいない。


「ママが買い物からの帰りにドアをちゃんと閉めなかったから、何かの拍子で開いちゃったんだよ。」そう言って、何事もなかったかのように長女バッタは論文作成に戻った。


そんなはずはない。買い物から帰ってきて何度も玄関の脇を通って二階に行っている。その時に扉が開いていたら気が付く筈ではないか。そうは言うものの、実際に誰かが家に侵入しているのだとしたら、えらいことである。ここは、私が扉をきちんと閉めていなかったとした方が、収まりはいいだろう。


何とも煮え切らないが、もうどこにも家の中には知らない訪問客の気配はない。そういえば、以前によく週末の買い物の帰り、大きな重い買い物袋を両手に下げているので、這う這うの体で鍵を開けて家に入り、買い込んだ食品や日用品を片付けているうちに、ご飯の支度にとりかかり、ドアの鍵穴に鍵が差し込まれたまま翌日を迎えてしまったことがあった。


アパート住まいの時には、荷物を抱えて幼いバッタ達を連れ出すことは本当に大変で、週末出掛けて日曜の夜に帰ってくると、玄関の扉がすっかり開いていたこともあった。あの時はワンフロアに2軒のみで、お隣さんはずっと留守だったので、誰も訪れずに、何事もなかったが、今考えても冷汗もの。


しかし、そうなのかなあ。本当に誰も来なかったのかなあ。


釈然としないが、寝室にシナモンの香を焚き、不浄の空気を清めることで、後は忘れることにする。忘れたほうが良いことはたくさんあるし、戸締りはこれからもちゃんとしよう。


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